ここから考えると、猫はオーヴェの妻であるソーニャの象徴とも考えられます。
そのため、猫がオーヴェの上で寝ていたのはオーヴェが妻と再会する、つまりは彼の死を表現していたのでしょう。
ゆりかごをプレゼントした真意とは?
オーヴェの隣に引っ越してきたパルヴァネは、映画の終盤で3人目の子供を出産。
最初こそパルヴァネ一家を避けていたオーヴェですが、最後はゆりかごをプレゼントしています。
オーヴェがパルヴァネにプレゼントしたゆりかごは、作中でオーヴェ自身が手作りしたものであることが判明します。
オーヴェはかつて妻との間に子供を授かっていましたが、出産する前に事故で死産させています。
そのため、本来であれば自分の子供にプレゼントするはずだったゆりかごなのです。
映画序盤の偏屈なオーヴェであれば、ソーニャとの思い出の品を人にあげるなんてことはしなかったでしょう。
しかし、そんなゆりかごをためらうことなくパルヴァネ一家にプレゼントしています。
つまりオーヴェは、自分の子供に注いでやれなかった愛情をパルヴァネの子供たちに与えようとしていたのでしょう。
ゆりかごを選んだのも、ソーニャが生前に話していた「車よりもゆりかごが良い」という言葉が理由といえます。
つまりゆりかごは、偏屈で不器用なオーヴェによる、最大限の愛の形なのでしょう。
タイトルの意味とは?
偏屈で孤独な59歳の男性オーヴェの心境の変化と半生を描いた「幸せなひとりぼっち」。
「幸せ」と「ひとりぼっち」という、対極的な言葉を用いたタイトルですが、実は様々な意味が隠されているのです。
ここでは、映画のタイトルに隠された意味について考察していきます。
心の繋がりの大切さ
他人を信じられず1人で孤独に生きていたオーヴェ。
自殺することばかり考えていた彼は、パルヴァネ一家との関わりのなかで、生きることに前向きになっていきます。
最後にはついに、偏屈で孤独なオーヴェが、隣人と頼り合いながら一緒に生きることを選んだのです。
本作のタイトルは、たとえ1人で暮らしていても心の繋がりがあれば孤独ではないことを表しているのでしょう。
オーヴェの人生観
また本作はスウェーデンの小説『En man som heter Ove(オーヴェという男)』が源作となっています。
ひとりぼっちを貫きながらも、パルヴァネ一家をはじめとした隣人から愛されて亡くなったオーヴェ。
本作のタイトルは、まさにオーヴェの人生観を意味しているのでしょう。
まとめ
生きる希望を無くした男性オーヴェの再生と半生を描いたスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」。
ユーモアを交えながらも語られるオーヴェの姿は、誰かと支え合って生きることの大切さを物語っているのです。
原作の小説では、映画では語られていない他の登場人物のアフターストーリーなども語られています。