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映画『劇場版 シドニアの騎士』はご存知原作者・弐瓶勉の漫画をアニメ映画化した作品です。
2014年に放送されたアニメ1期の好評を受け、静野孔文監督の指揮の下2015年に公開されました。
構成としてはテレビ版の総集編も兼ねつつ本作ならではの新作カットも追加されています。
谷風長道が地下の居住区に現われ、奇居子と名乗る巨大な敵を討つまでが本作の物語です。
未曾有の脅威に際して星白閑やイザナ・緑川纈・岐神海苔夫など様々な人物の心理が細かく描かれています。
本稿では長道と星白の関係をネタバレ込みで考察していきましょう。
また、星白の死が長道に与えた影響や奇居子が星白の姿を模した意味も併せて読み解きます。
SFアニメの正統な後継者
「シドニアの騎士」は「ヤマト」「ガンダム」「エヴァ」といったSFアニメの正統な後継者でしょう。
各登場人物の名前やロボットなどの設定が軒並み過去のSFアニメを意図的にオマージュ・パロディしたものです。
しかし本作の中核を成しているのはあくまでも「男女の愛」であり、中心はラブロマンスにあります。
長道と星白を中心に中性的なイザナまで絡むなど、先達の作品群が挑んだタブーに本作も挑んでいるのです。
本作がテレビ版の総集編じみた構成なのも「機動戦士ガンダム」の劇場版3部作の構成とそっくりでしょう。
かなりエッセンスで詰め込んでいますが、盛り上げ所は決して外しておらず初見の方も安心して見て頂けます。
改めて本格派のSFロマンに挑んだ本作の物語が何を伝えてくれるのでしょうか?
長道と星白の関係
テレビ版と並んで本作の核にあったのは長道と星白の関係ではないでしょうか。
2人は命を賭けた戦いの中で徐々に惹かれ合っていくようになります。
それは果たして友情なのか恋なのか、2人の関係を改めて読み解いていきましょう。
ありがちな男女の関係
まず長門と星白の関係は単独で見ると意外性はそこまでなく、割とありがちなものです。
偶然出会った男女がある出来事をきっかけに親密になるボーイミーツガールでしょう。
長道が鈍感で星白が片思いしている設定もそれ単独では大きなドラマにはなりません。
しかし、日常で顔を合わせる機会が多く、普段から少しずつ距離を縮めて仲良くなっていました。
決してひと目惚れではなく共に過ごす日々の中で自然と関係性が深まったのでしょう。
漂流生活
そんな2人の距離を縮める決定打となったのは数日間の漂流生活でした。
カビザシ回収任務でシドニアへの帰還が困難となった星白を白石が助けてくれたのです。
そこで不慣れながらも他者の為に頑張る長道の人となりを身近で知ったのではないでしょうか。
吊り橋効果に見えるかも知れませんが、これを機に好意を抱くようになったのは間違いありません。
しかし、これで順風満帆なのかというと決してそうではなく1つの誤算がありました。
しかもそれは2人の運命を完全に引き裂いてしまうような最悪の誤算だったのです。
岐神の嫉妬
長道と星白最大の誤算は岐神の長道に対する嫉妬であり、これが非常に厄介でした。