出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07G7F1CDB/?tag=cinema-notes-22
『リバーズ・エッジ』は岡崎京子の漫画を原作とした青春ドラマです。
高校生たち中心に展開するストーリーは、ドラッグに暴力、いじめにSEXに同性愛と思春期の闇をこれでもかというほど内包。
悩みを抱えた高校生を赤裸々に描きつつ、虚無感すら成長の糧であるかのようなドラマを完成させていました。
今回は、そんな作品の中からラストシーンで山田とハルナが2人で川を見つめていた意味を考察。
ルミが病院着でベッドにいた理由や、3人が死体の穴を掘った心理にも目を向けながら読み解いていきます。
山田とハルナが川を見つめていた意味とは
ハルナが引っ越す前、山田は最後の散歩に彼女を誘います。
2人が足を止めて会話をする場所に選んだのは、思い出の詰まった川の橋の上。
「river’s edge」というタイトルの如く、2人の思い出や青春は川の端で展開していったのです。
川は、ハルナと山田にとって死体の秘密を共有した思い入れの強い場所でした。
そういう点から2人は最後の場所に川を選んだのかもしれません。
秘密の共有者
観音崎がきっかけでハルナを気に入った山田は、河原の藪に隠された死体の存在を教えます。
1年以上隠され白骨化した死体は、山田の宝物。
死と直面し触れ合うことで埋まる心の隙間を、ハルナとも共有しようと考えたのです。
そこには、ハルナに対する信頼と共感してくれるだろうという確信があったのでしょう。
川辺に隠された小さく重大な秘密は、共有することで友情や愛情とは違った絆を生んだのです。
特別な友人
ハルナ:山田君は、死んでないと人を好きになれない?
山田:僕は、生きてる若草さんが好きだよ。ほんとだよ?
引用:リバーズ・エッジ/配給会社:キノフィルムズ/木下グループ
山田一郎(吉沢亮)は、男にしか性的興味を抱かない同性愛者でした。
彼女がいながらも体の関係を持つのは男性だけで、同級生の男子にも一途な恋心を抱いています。
そんな彼がハルナを好きだと言ったのは、恋や愛とは違う特別な感情を抱いたからなのでしょう。
秘密を共有したことで特別な繋がりを作った2人は、言葉だけでは表現できない特別な友人関係になったのです。
別れの儀式
川辺で迎えたラストシーンには、思い出や感情を詰め込んだ以外にももう1つの意味がありました。
若草さん、もう一度UFO呼んでみようよ
もう一回やってみようよ
引用:リバーズ・エッジ/配給会社:キノフィルムズ/木下グループ
過去に1度だけUFOを呼んだことがあるという山田がハルナと再びUFOを呼びたいと願うこと。
それは、新たに2人の特別な思い出を作る儀式としたかったのではないでしょうか。
その行為が最後だと感じたからこそ、ハルナは感情で胸がいっぱいになり涙を溢れさせます。
恋や愛ではない特別な関係の2人だったからこそ、彼らの別れには特別な儀式が必要だったのかもしれません。
歪んだ少年少女たち
映画の主人公は若草ハルナ(二階堂ふみ)ですが、作中ではキャラクター視点がテンポよく切り替わります。
思春期の少年少女はさまざまな角度から歪んでおり、抱えきれない悩みをドラッグやSEXに逃避。
依存や逃避が新たな問題を生み、自分たちの逃げ場を失わせてしまったのです。