死んだはずのチョンが生きていてドクに復讐する展開はドラマ性たっぷりですが、ストーリー的にはやや無理筋との印象も否めません。
チョンはドクに対する復讐の一環でドクの網膜をハッキュに提供するように仕向けます。
しかしながら、結局はこのチョンの復讐がハッキュとドクの愛情をより深いものにしていく皮肉は素晴らしい演出です。
それにしても復讐を思惑通り果たしたと思われるチョンの今後は果たしてどうなのでしょうか。
チョンのこれからについて何か予感させるものが最後にあったらよかったかも知れません。
ドクの献身の意味
ドクの献身はハッキュに取り入って復讐を果たすためだけだったのでしょうか。
ドクは自分自身にはそのように言い聞かせていたかも知れませんが、その真意は彼女自身にもわかっていなかったのかも知れません。
復讐だけだったのか
ドクのハッキュに対する愛は例え彼に裏切られても揺らいでいませんでした。
もちろん手前勝手なハッキュを恨みはしたでしょう。
彼女が復讐のためにハッキュを陥れる計画を練っていた際、ドクの心のどこかにハッキュに近づけるとの期待感があったはずです。
ドクには復讐をしているとの満足感と同時に、ドクの役に立てているという満足感も同居していました。
特に彼女はハッキュの文才を高く評価していました。
ドクには視力が低下していく中でハッキュの筆が円熟化していく満足感もあったはずです。
角膜提供を受け入れたドク
ドクからハッキュへの角膜移植は映像的にはかなりショートカットしている印象です。
移植に伴うドクやハッキュの心理状態の説明は一切ありません。
チョンの陰謀で移植が進められたかの展開に見えますが、角膜提供はドクにとってハッキュへの献身の一つでした。
復讐の連鎖を二人の愛の形がくい止めたのです。しかもそれを二人の映像だけで表現しています。
ハイヒールが意味するもの
ハッキュがドクに買ってあげたハイヒールはこのドラマの中で象徴的な役割を果たしています。
彼女がセジョンとしてハッキュの前に現れた際、足にはこのハイヒールがありました。
このハイヒールを履いたままの二人のセックスシーンが印象的ですが、ドクにとってこのハイヒールはハッキュそのものだったのです。
彼女にとってこのハイヒールをはき続けることは、ハッキュにセジョンは自分だと気づいて欲しい部分がどこかにあったかも知れません。
【愛のタリオ】に見る男と女の愛憎
【愛のタリオ】は韓国の昔話「沈清伝」が背景にあるとのことですが、内容は男と女の愛憎劇です。
男の身勝手な愛の形やそれを全面的に受入れ一途な愛を貫く女の愛の形が描かれています。
二人の愛の形そのものが次第に変質しているプロセスも見応えタップリです。
今度は角膜を提供したドクがハッキュの献身を受け入れる順番になりました。