望まぬ妊娠で出来た子を堕ろすことは人殺しになるし、女性として負けを意味します。

しかし、生んでしまえば女を捨てきれない自分を認めることになってしまうのです。

その葛藤の板挟みで苦しんだ結果、自殺以外の選択肢がなかったのでしょう。

理想の自分と本当の自分

上2つを突き詰めていくと、結局は理想の自分と本当の自分とのギャップに行き着きます。

女を捨てた理想の自分とはすなわち若松プロをはじめ、周囲が求めるめぐみです。

しかし、そのこととめぐみ自身が潜在意識でそれを望んだかどうかはまた別物でしょう。

本当に女を捨てることを望んでいれば、監督と寝て妊娠などしない筈です。

心の叫びを無視して頭だけで生きていこうとしたことが最大の原因ではないでしょうか。

現代にも通じる心の病がめぐみを通して描かれていることが窺えます。

一緒に放尿したがった理由

放尿

自殺という悲しい形で人生に幕を閉じためぐみですが、印象的なシーンがあります。

それは飲み屋談義の時にめぐみが男性陣にの放尿に参加しようとしたところです。

止められためぐみですが、何故そんなことをしようとしたのでしょうか?

形から入る

「形から入る」良さ (VS-Aidブックス)

まず1つ目に、めぐみは男性陣の精神を真似するために形から入ったのでしょう。

勿論こんなシーンは史実にはなく、あくまでも創作なのですが面白いシーンです。

男性側の行動を模倣することで、精神を男性側に近づけようとしたことが窺えます。

生真面目で不器用な性格のめぐみですから、他の選択肢がありませんでした。

会議などでも発言権はありませんし、先輩に自分の素を見せることも出来ません。

だからこそ共に飲みに行き、可愛がられようとしたのではないでしょうか。

跳ねられない焦り

2つ目に、めぐみは中々跳ねられないことへの焦りがありました。

助監督として「女親分」と呼ばれる領域まで行っても、伸び悩むのです。

他の男性スタッフがどんどん独立を果たす中、めぐみはポジションが中々決まりません。

そうした周りの男性陣に置いていかれ、取り残されることへの苦しみもあったでしょう。

努力しても中々結果に結びつかないという現実に苦労したのではないでしょうか。

だからこそ、そうした焦りが共に放尿しようという突飛な発想に至ったのです。

女を捨てられない

捨てる女 (朝日文庫)

そして3つ目に、前述したようにめぐみが結局は女を捨てきれないでいるからです。

男性側の精神を真似つつ、結局男性陣に体を武器にして取り入ろうとします。

女らしくありたいのか、女を捨てたいのか最期まで軸が定まらず煮え切らないのです。

その中途半端さを放尿によって振り切ろうとしたのではないでしょうか。

もしこの時、監督達と一緒に放尿をしていたら、結果は少し違ったかも知れません。

若松がインターを歌った真意

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

めぐみの自殺後、若松孝二はバス出発に際して毛嫌いしていたインターを歌います。

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