出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01ARN8YHU/?tag=cinema-notes-22

映画『007スペクター』はシリーズ通算24作目、ダニエル・クレイグ版としては4作目の作品です。

前作『スカイフォール』まで続いてきた4部作の集大成となり、以下を受賞しました。

第73回ゴールデングローブ賞主題歌賞受賞
第88回アカデミー賞歌曲賞受賞
第39回日本アカデミー賞優秀外国作品賞ノミネート
第21回エンパイア賞イギリス映画賞受賞
スリラー映画賞受賞

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/007_スペクター

監督がサム・メンデス、ボンドガールにはモニカ・ベルッチを配しています。

そんな本作の物語は闇の組織スペクターとの満を持しての直接対決です。

新生ジェームズ・ボンドの物語はどのような結末を迎えるのか、思い入れも一入であります。

本稿ではラストでボンドとマドレーヌが消えた先をじっくり考察していきましょう。

また、タコの紋章の指輪が与えた影響やホワイトの自殺理由も併せて読み解いていきます。

喪失と訣別

喪失学 「ロス後」をどう生きるか? (光文社新書)

『カジノ・ロワイヤル』から続く本シリーズには「喪失と訣別」という一貫したテーマがありました。

ダニエル・クレイグが演じるジェームズ・ボンドは表情や振る舞いに晴れない寂しさが垣間見えます。

なぜならば、彼は1作品ごとに己の中にこびりついていた欲や執着を手放しているからです。

1作目が愛したボンドガール、2作目が復讐と未練の感情、そして3作目では上司のMを手放してきました。

そしてその度にクレイグの演じるジェームズ・ボンドはどんどん人間らしくなくなっていくのです。

欲や執着を捨てていくほど、彼は身も心も軽やかになり、歴代ボンドの系譜に近づいていきます。

そんな彼が本作で何を喪失し、また何と訣別していくのかを本題に沿って考察しましょう。

ボンドと娘が消えた先

ジェームズ・ボンド・ライフスタイル: 己を越えろ!

本作のラストではボンドガールのマドレーヌを救出し、どこかへ消えていきました。

果たして彼らが向かった先はどこなのでしょうか?

ロンドンの街へ

TRANSIT(トランジット)45号 麗しきロンドン (講談社 Mook(J))

まず1つ目に、彼らは車に乗ってロンドンの街へ向かったことは事実です。

ただ、それは任務のためではなくプライベートの為ではないでしょうか。

ここで大事なことはボンドがやっとプライベートを楽しむ余裕が出来たことです。

1作目~3作目までのラストはいずれもが「次の任務へ向かうボンド」でした。

つまり、彼がまだ見習いの段階故に自由を楽しんでいなかったということです。

それが今回でようやくボンドガールとのデートを楽しむ段階に至りました。

4作かけて作り上げたジェームズ・ボンド像がここでやっと完成を迎えたのです。

執着はない

しかし、恐らくマドレーヌと生涯を共にする深い仲にはならないでしょう。

仮に肉体関係などを持ったとしても、あくまでその場限りでしかない筈です。

過去作で人を愛し裏切られ、その未練を断ち切るという試練を乗り越えています。

そこまで壮絶な女難を経験したボンドが深い関係になりたいわけがありません。

彼の心の中にはもう殆ど人間としての執着は残っていないはずです。

表面上ハッピーエンドに見えても、やはり孤独は永遠に付きまといます。

MI6との訣別

そして、これが最も大事ですが、ボンドはとうとうMI6という立場すらも手放しました。

そう、彼はとうとうジェームズ・ボンドという自分の称号や名誉ですら捨てたのです。

これは今までになかったといえる結末ではないでしょうか。

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