しかしバンダースナッチという言葉は一体どんな意味なのでしょう?
この映画の重要アイテムであるバンダースナッチは造語なのですが、実はこの言葉の意味自体にも映画のカギが隠れています。
鏡の国のアリスとバンダースナッチ
バンダースナッチという言葉はこの映画の造語ではなく、作家ルイス・キャロルが作り出した架空の生物です。
そしてバンダースナッチは、ルイス・キャロル著「鏡の国のアリス」に初めて登場します。
その中でルイス・キャロルはバンダースナッチのことを、「とても狂暴な為もしも遭遇したら避けるべきだ」と表現するのです。
とても狂暴なバンダースナッチ…。この名前がついたタイトルから、このゲームが主人公に牙をむくものであることが浮かび上がってきます。
バンダースナッチが示すものは
バンダースナッチは狂暴な生物で、遭遇すれば強靭な顎を使い襲ってくるといいます。
そしてこのタイトルがついたゲームは、ルイス・キャロルの言葉通り主人公ステファンに牙をむけてくるのです。
ステファンはプレーヤーに選択肢を与えますが、彼は劇中で面白いことを言っています。
プレーヤーは自分が選んでいるような気になるが、実はステファンが描く結末へと導かれているのだと。
しかし一つのルートの中では後半ステファンはまるで自分が操られているようだと言い、彼自身の精神が崩壊していきます。
バンダースナッチは気づかないほどの速さで触れたものに牙をむけるのです。それはステファンも例外ではありません…。
父との確執
さてこの映画に大きな影響を及ぼしているのは、主人公のゲーム制作者ステファン・バトラーと同居する父との確執です。
この映画を通じてステファンと父との間には距離感があり、お互いどう接していいのか分からない関係であることが良く分かります。
そして気になるタバコや灰皿へのフォーカスショット。これは一つのルートである父殺害へと通じる暗示です。
一体この父子の間に何が起こったのでしょう?
父が隠したウサギのぬいぐるみ
ステファンの母は彼が小さなときに列車事故に巻き込まれ亡くなるのですが、そこには父が大きく関係しているようです。
母の死因は列車事故に巻き込まれた事故死。
ステファンの父は、もう大きいのだからとステファンの大切なウサギのぬいぐるみを隠してしまいます。
母と一緒に祖父母の家に行く予定だった朝、ステファンはウサギのぬいぐるみを探し母は乗るはずだった列車の時刻を遅らすのです。
もしも予定通りの列車に乗っていれば死なずにすんだ母…。
父は罪悪感から息子との距離を取り、息子は母が死んでしまった現実と折り合いをつけられず精神不安に悩まされるのです。
母を殺したのは父
ステファンはおそらく母を殺したのは父だと思っているのでしょう。