弟への過剰な愛以外に人の愛を信じない朱里にとって、身体の関係は自分の支配欲を満たす手段でしかありません。
雄大にも朱里に似た支配欲があったようです。
蝶への異常な執着や、生きたまま燃やされる姿に我を忘れる姿には、情緒的な人間の知性や感性が感じられません。
姉弟の性格や行動を調べるうちに、姉弟の異常な関係に気づいた恭介は、着々と復讐の準備を進めていったのです。
木原坂姉弟はサイコパスなのか
雄大と朱里の思想や、反社会的な行動は正常ではありません。
明確な定義はないようですが、生まれながらに性格の異常性を併せ持つことをサイコパスというそうです。
罪悪感や良心の欠如、過大な自尊心と自己中心的行動などは、典型的な特徴です。
それでいて口達者で平気で嘘をつくところは、姉弟に共通しています。
姉弟の異常性は父親の虐待によるものなので、後発性のサイコパスと言えそうです。
正体を最後まで隠した恭介の目的とは
恭介の目的は、司法の手にゆだねることなく亜希子の復讐を果たすこと。対象は実行犯の木原坂姉弟と関与した小林でした。
正体を隠して小林に近づき朱里を狙う恭介
正体を隠した理由は、小林との信頼関係を持つためでしょう。
調べれば自分の素性を知られることは計算していたと思われますが、恭介には小林を通じて朱里に近づく必要がありました。
実行犯の朱里だけは絶対に許せなかったのでしょう。朱里は自分の手で葬る計画でした。
小林と雄大には、最愛の朱里が焼死する瞬間を見届けさせ、最後に精神的なダメージを与えようとしたのです。
なぜ一部始終を書物にして届けたか
計画のすべてを書物にして届けた理由を考察してみました。
恭介は、雄大と小林だけに精神的な打撃を与えることを考えたのでしょう。
読んだ者だけが精神的な苦痛を感じる方法を選択しました。
証拠を残すことになる危険はありますが、より個人の潜在意識に罪悪感と後悔が刷り込まれるのです。
公開処刑よりも効果的な方法で復讐を果たした恭介。
形は違いますが、恭介の書いた本を読むという亜希子の最期の願いにも応えたのです。
まとめ~恭介のこれからの人生~
復讐を遂げた恭介のこれからを考えてみました。
復讐の一部始終を記した本が警察の手に渡ると、恭介は間違いなく逮捕されるでしょう。
復讐を終えて金沢の思い出の海岸に立つ恭介には、ある種の覚悟が感じられます。
亜希子のいない人生に何の未練もなく、生きていくことすら無意味に感じているかもしれません。