野球だけでなく全てのプロスポーツ界の人たちにこの映画が示したプロ意識とはどのようなことなのかを噛みしめてもらいたいところです。
リッキーの条件
リッキーはジャッキーと面談した際、採用にあたって一つだけ条件をつけます。
それは「何があっても怒らない」という条件でした。
彼がジャッキーにこの条件をつけた思いには並々ならぬものがあったに違いありません。
そこにはこの映画の本質的なテーマである「勇気とは何か」があるのです。
その真意は
リッキーはジャッキーが踏み込む世界が並大抵の覚悟では乗り切れないことを理解していました。
それでも彼はジャッキーにこの世界を変えてもらいたかったのです。
彼には現在世界中のプロスポーツに見られるように、多くの黒人やアジア人が活躍するメジャーリーグの未来が見えていたのでしょう。
彼はその先駆者としてリッキーを送り出すにあたって一つの武器を授けたのです。
それは「やり返さない勇気」という武器でした。
やり返した途端に全ては水泡に帰すことを彼は理解していたのです。
それにしても最期までこの「やり返さない勇気」を貫いたジャッキーのすごさは確かにリスペクトに値します。
リッキーは何を目指していたのか
リッキーはドジャースのGMですから、何としてもドジャースを優勝させたい思いだったはずです。
そのためにはジャッキーのような実力のある選手を入れるだけでなく、選手たち全体に活を入れる必要を感じていました。
人種差別を何とかしたいなどというきれい事ではなく、プロの仕事をしたかったのではないでしょうか。
野球の観戦に黒人が多く詰めかけていることもわかっていました。
「ドル紙幣は白でも黒でもなく緑だ」という彼の言葉にはプロのGMとしてなすべきことは何かが明確に表れています。
プロスポーツのGMはゲームに勝つだけでなく、経営的な配慮も忘れてはいけないのです。
個人的な問題
リッキーには人種問題に絡む個人的な事情もありました。
彼が若かった頃チームメイトだったある黒人選手が人種差別のため挫折するのを看過してしまったという自責の念です。
彼は常に真摯であろうと自分に言い聞かせて人生を送ってきたと思われます。
この過去はそのような彼に刺さったトゲのようなものだったのです。
彼にはジャッキーにそのトゲを抜いて欲しいという思いもあったのではないでしょうか。
チームの絆
この映画ではどのような差別や屈辱を浴びようと紳士的に振る舞うジャッキーの行動によって、次第にチームが変わっていく姿も描かれています。
もちろん現実は映画のようにスムーズに状況が変化したのではなく、行ったり来たりしながら徐々に変わっていったのでしょう。
それまで最後にシャワーを浴びていたジャッキーに仲間が声をかけて一緒にシャワーを浴びようとするシーンがあります。
その時隣でシャワーを浴びていた選手がさりげなくジャッキーから離れていきます。
わかってはいてもやっかいな人間の心情をきめ細かく表現している場面です。
チームメイトが彼を拒否した理由
この手の作品ではともすれば差別される側に立った描写が中心になりがちですが、差別してきた側の心情はどうなのかも気にかかります。