ドジャースの選手たちはジャッキーをチームに入れないように皆がサインした嘆願書をフロントに出します。
少し躊躇した選手も描かれていますが、大勢はサインを受け入れジャッキー拒否に動きました。
人がそれまでに植え付けられてきた先入観や生理的な感覚は根深いものです。
わかってはいても同調圧力に屈してしまう心情は理解できないことはありません。
選手たちにそれほどの悪意はなかったのです。変えられなかっただけなのでしょう。
深まった絆
ジャッキーは耐え続けます。いいプレーに徹して敵チームの挑発にも乗らないように努めます。
やがてチームメンバーは敵チームのジャッキーへ罵詈雑言が自分に向けられたかのように感じはじめるのです。
「同情は苦しみの共有から起こる」といういわれがリッキーによって紹介されます。
ジャッキーの苦しみが次第にチーム全体で共有されるようになりました。
そして勝利への思いや優勝への思いの共有も次第に強くなっていったのではないでしょうか。
42は特別な背番号
42はジャッキーがドジャースでつけていた背番号で、米球界では42は永久欠番とされています。
メジャーリーグだけでなくアメリカの全ての野球選手ならばこの42番をつけることができません。
そのため日本に渡った元メジャーリーガーたちは皆42を日本の野球界でつけたがるそうです。
さらにジャッキーがメジャーデビューを果たした4月15日には何と一日だけ全てのメジャーリーガーは背番号に42をつけてプレーします。
これらはアメリカ球界のジャッキーに対するリスペクトが形になった素晴らしい取り組みといえるのではないでしょうか。
先駆者は異端者だった
歴史を通じて大半の先駆者たちは逆境を経験します。先駆者は新しいが故にその時代に受け入れられないからです。
「慣習を破るものは世間を敵に回す」という趣旨の言葉が映画の中で語られます。
白人だけの世界だったメジャーリーグに黒人が入ることはまさに常識を破る行為だったのです。
でも世界を変えるのはこの異端者である先駆者です。
昨日の延長線上に今日があったようには、今日の延長線上に未来はありません。
これまでも常識に刃向かう異端者が世の中を変えてきたことを忘れてはいけないのです。
【42 〜世界を変えた男〜】のテーマは勇気
映画【42 〜世界を変えた男〜】は人種差別撲滅の文脈で語られることが多い作品ですが、この映画の本当のテーマは勇気だといえます。
ジャッキー本人の凄まじいともいえる勇気はもちろんですが、彼を支えたリッキーやレオ、妻のレイチェルたちの勇気の物語なのです。
スーパーマンのように暴れ回る勇気ではなく、物静かで紳士的な中に潜めた「やり返さない勇気」に着目しましょう。
米球界ではジャッキーに対するリスペクトを示すために42番を永久欠番にしたり、ロビンソンデーを設けています。
このような姿を見るとアメリカもまんざら捨てたものではないと思えてくるではありませんか。