さらにハリエットの活動を支援するのも、逃亡経験のある元奴隷たちであり、その体力と経験により多くの奴隷を開放できたと考えられます。
地下鉄道の車掌として活躍するのは、支援する若い男性たちでも一目置く知識と体力があるから。
後に南北戦争で、将校として黒人たちを率いたことからも、確実に逃亡させる力をハリエットが持っていたことが分かります。
激化する南北の争い
ハリエットには、多額の懸賞金がかけられました。当然、ハリエットを捕らえることができれば、賞金が入るので奴隷狩りは躍起になります。
そもそも、なぜ賞金がかけられたのでしょうか。そこには、奴隷制度に関するアメリカの南北の争いが関わっています。
奴隷制度に支えられていた南部
アメリカ南部の奴隷を容認する州は、大きな農場主と農場主の下でこき使われる黒人奴隷によって経済が成り立っていました。
逆に、黒人奴隷がいなければ、南部の州は経済的に成り立たちません。
一方北部は、農業ではなく商業で成り立つ州が多く、人権保護という当時としては先進的な考え方をする州ばかりです。
この対立が激しくなる中、ハリエットという存在は南部の州にとっては自分たちの根幹を揺るがす存在でした。
だからこそ、懸賞金をかけることで活動を停止させ、奴隷解放運動そのものの広がりを止めたかったのです。
逃亡奴隷法への流れ
1950年に逃亡奴隷法を制定されますが、法令が成立するということは、まだ奴隷解放は全体に浸透した考えではないということです。
少なくとも逃亡奴隷法が必要と判断されるほど、アメリカ全体で見ると、黒人は奴隷という考え方を持っていました。
だからこそ、この考え方を根本から覆すハリエットらの奴隷解放運動は、運動を阻害され続けるのです。
とくに保守派は、変化を嫌うので運動は起きてほしくないでしょう。その一環として、ハリエットに対して懸賞金がかけられます。
結果的に活動が止まるどころか拡大するため、逃亡奴隷法が制定されました。
ハリエットに懸賞金をかけるということは、それほどまでに危機感を覚えていたということの裏返しになるのです。
ギデオンはいつでも追い込める
ハリエットは、ギデオンを追い込んでおきながら、殺すことはしませんでした。
ハリエットは、今後の情勢を考えた上で「いつでも追い詰めることができる」と考えたため、ギデオンを殺さなかったのです。
南北戦争の勃発
ギデオンを見逃した数年後、南北戦争によって激戦地となったのは、ギデオンが農場主として君臨する場所周辺でした。
ハリエットは、ギデオンの農場周辺や州は激戦地となることを把握しており、再びギデオンを追い込むことができると考えたのです。
ギデオンは農場を持っているということは、簡単に土地を離れることはできません。
だからこそ、場所さえ分かっていればいつでも戦争に巻き込むことができるのです。
ハリエットは、いずれギデオンを苦しませることができると考えていたから、殺さずに見逃したのでした。
北部将校として活躍した
南北戦争でハリエットは、黒人たちを率いて戦場で戦います。