出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B085XKNX49/?tag=cinema-notes-22
人間の心の闇を描いた「楽園」。
限界集落で起きた2つの事件を通じて、村人たちの集団心理と追い込まれていく容疑者の姿をストレートに描いています。
ここでは、タイトルの楽園の意味を深掘り、豪士の焼身自殺の理由や紡の心情などを考察しました。
鑑賞後の感想で賛否別れる評判となった本作は、吉田修一さんの原作「犯罪小説集」の短編2編を映画化。
監督は瀬々敬久さん。
主演の綾野剛さんをはじめ、杉咲花さん、佐藤浩市さんなどの演技派のキャストが重厚な演技を見せています。
第76回ヴェネツィア国際映画祭公式イベント「Focus on Japan」正式出品作品。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/楽園
楽園とは
楽園の意味を考察してみました。辞書には、みんなが苦しまずに安心して生活できる場所と書かれています。
新しい環境に描く夢
誰しも新しい場所に移り住む時や、就職や入学進学などの新しい環境には希望があります。
何か良いことがあるのではないかと考え、ワクワクする気分を味わうこともあるでしょう。
この物語の楽園のひとつの意味がそこにあります。夢や希望を持てる新しい環境です。
悲劇のどん底に落とされる豪士一家も、村八分に苦しんだ善次郎も最初は希望を持っていました。
心のよりどころ
集落の人々は、静かで平和な変化のない生活を望んでいました。
誘拐事件や、村おこしのための新しいアイディアなどに出会う免疫がなかったのです。
保守的な限界集落にありがちなことなのかもしれません。
そんな集落に誘拐事件が起こった時、村人たちはどこかに心のよりどころを求めたのでしょう。
楽園の持つもうひとつの意味は、精神的な意味で心が穏やかに落ち着ける場所だったと思われます。
恐ろしい集団の正義
みんなが言っているから真実なんだと思い込む集団心理。
集落の人々が豪士を誘拐事件の犯人だと口々に言い始めたのも、この集団心理が働いたのでしょう。
真犯人かどうか確信はないけれど、豪士を標的にしました。
藤木五郎を中心とする人たちが、人々の不安を解放するために豪士を犯人を仕立てたともいえます。
集団心理は、自分以外の誰かに矛先を向けることで自分を正当化する恐ろしい感覚です。
心のよりどころは、裏を返せば悪魔のような集団の正義でした。
楽園は正直者の心を蝕んだ
善次郎は正直者でした。妻の死というつらい過去を持ちながらこの集落に移住して来ました。
善次郎は新天地にささやかな希望を持ち、集落の人々のために懸命に努力しますが報われません。