つまりロビンは、勧善懲悪以前に、個人的な恨みが州長官にあるのです。だからこそ、苦しめて殺そうと思います。
苦しめるためには、金を献上して、信頼させて裏切る。これが最善の方法と考え、ロビンは金を献上したのでした。
腐敗する政府
歴史上では15世紀に、ルターの宗教改革が起きました。
その理由は、教会(カトリック教会)が私腹を肥やすために信者から金を巻き上げていたから。この構図は、本作の構図と同じです。
本作では聖教者や権力者がグルになって、金を市民から巻き上げる腐敗っぷりを表現していました。
腐敗した政府・権力者に、どう自分自身そして市民の恨みをお返しするのか。ロビンはこう考えて、まずは信頼獲得に走るのです。
自分と市民の恨みは小さくありません。盛大に権力者たちを見返す作戦の第一歩が、金の献上でした。
無意味だった十字軍
ロビンが命をかけた戦争は、結局権力者が得をするだけであり、十字軍を組織した権力者が十字軍を弱体化させようとしていました。
命をかけたのに、その行動をあざ笑うかのような権力者の行動に、ロビンは怒るのです。
つまりロビンは、腐敗した政府を叩きたい、市民を救ってやりたい、と思う前に、個人的な恨みや憎悪があるのでした。
これが映画内でロビン・フッドが活躍する大元の動機です。
プラスマイナスゼロ
ロビンが献金したその金は、政府から奪ったものです。しかし、その政府から奪った金は、元は市民から巻き上げたもの。
つまりロビンは、市民が巻き上げられた税金を奪って、それを返すことで信頼を得るのです。
結局巻き上げられていた税金なので、その時点で誰かが損をしたわけではありません。しかも、ロビンの裏切りへの布石が打てます。
政府にとってはプラスマイナスゼロ。ロビンたちにとっては、信頼を勝ち取るプラスが残ったことからも、献金作戦は成功したのです。
ウィルは野望のために残る
イヴ・ヒューソン演じるマリアンが街を出ていくにも関わらず、ウィルはラストシーンで街に残ることを決意しています。
その決意の裏には、ウィル自身の野望がありました。
政治家を目指していた
映画冒頭、ウィルは政治家を目指すことを口にしています。
このころ政治家を目指すのであれば、権力者に見染められて遠くに出るか、地元の権力者になるかのどちらか。
ほとんどの場合が、地元の権力者になるのであって、ウィルもその一人だと考えられます。そこから、少しずつステップアップするのです。
ウィルは映画内では、まだ政治家になっていません。
ということは、今後自身の野望を達成するには、まず街に残って政治家にならなければいけないのです。
目の前のポストが開いた
映画ラストでは、州長官が殺されたので、そのポストが空席になっているということです。
ウィルはそこに目を付け、枢機卿に密会して力説し、街の最大権力を与えられました。