政治家になりたいと思っていたウィルは、手っ取り早く権力を手に入れるため、街に残ったのです。
さらに政治家の第一歩が、大きな権力を与えられたことを考えると、ウィルにとってはこの選択が成功だったかもしれません。
腐敗した権力者は嫌い
ウィルは州長官のように、政治家になりましたが、ノッティンガム州長官のような政治家は目指していません。
というのも、映画内でも市民に重税を課す政府のやり方に、ウィルは反感を覚えています。
つまり、ウィルは市民のための政治家になりたいと思っているのです。
クリーンな政治家としてデビューするならば、これまで虐げられてきた地元の市民のための政治を行いたい。
そう思って、ウィルは街に残るのでした。
ウィルが抱いている「恨み」
ロビンが政府や権力者を恨んだように、ウィルはロビンやマリアンに対して恨みを抱いています。
街に残って政治家になったのは、クリーンな政治家としての心もありつつ、個人的な恨みもあるのです。
マリアンを奪われた
ウィルもロビン同様、最愛の人を奪われました。ウィルから見れば、マリアンは未亡人であり、正当に愛した人です。
しかし、映画ラストでロビンとマリアンがキスをする様子を見て、ウィルはマリアンを諦めます。
ウィルにとっては、ロビンは恋敵であり、恨むべき相手なのです。
だからこそ、政治家になって初の演説で、ロビンを悪党と名指ししました。
最愛の人を奪われた恨みが、政治家としての野心を後押しし、市民をあおって「ロビン狩り」を始めるのです。
権力者としての地位と権力
ロビンとマリアンへの恨みを抱いたウィルは、どうにかして二人に仕返ししたいと思います。
そのときに思いついたのが、自身の野望であった政治家となり、権力を使って二人を追い込む事だったのです。
街の全権力を与えられたウィルは、市民に対して自由に命令できます。
こうしてロビンとマリアンを追い込めば、ウィルは恨みを晴らすことができるし、これが現在のウィルの一番の希望です。
奪われた恨みは力へ
故郷を奪われ、子どもまで奪われかけたジョン。財産や妻を奪われたロビン。愛する人を奪われたウィル。
本作『フッド:ザ・ビギニング』で、重要な登場キャラクターは、みな奪われた側の人間です。
一方搾取する側は常に搾取しており、結局枢機卿は生き残っています。
戦争は結局権力者が得をするだけ、と映画内でロビンは気付きますが、映画が終わってもこの構図は変わらないのです。
童話ではない、民間伝承の伝説を映画化した本作は、人間世界のリアルな事情を映し出しています。
原作の『ロビン・フッド』にも、いろいろな説があるようなので、こちらを詳しく見ると、より深い考察ポイントが生まれそうです。