アントニオの「元に戻ろう」といい寄る姿勢にジョバンナの心は揺れたことでしょう。
停電という舞台設定も二人を揺り動かしました。暗闇が現実逃避を可能にしたのです。
しかし明るい灯りが戻るとジョバンナの心は現実に戻ったのではないでしょうか。
時の流れを経て二人には戻らなくてはいけない場所ができていました。
愛しながら別れなくてはいけないこの現実の残酷さは我々の胸を打ちます。
それにしてもこの映画は汽車が非常に効果的に使われています。運命の岐路には必ず汽車が出てくるのです。
マーシャの決断
最初に会った際ジョバンナにマーシャの若さと可憐さはとても眩しかったことでしょう。
でもマーシャの心は必ずしも平安ではなかったのです。
アントニオと出会い、彼との生活を築いたマーシャの心の中に分け入ってみましょう。
アントニオを助けた意図
雪に埋まったアントニオを助け出したマーシャはどのような思いだったのでしょうか。
その時彼女はあどけない少女でした。雪の中でまだ息があるアントニオを偶然見つけ、純粋な気持ちから彼を救いたいと考えたに違いありません。
助けた後のことなど考えるだけの分別はなかったのではないでしょうか。
しかしこのマーシャの純粋な行動がマーシャ自身やアントニオ、ジョバンナの人生を大きく変えてしまうことになるのです。
何と人は運命に翻弄されて生きているのでしょうか。まるで神が人の運命を弄んでいるかのようにも思えてきます。
アントニオとの生活
マーシャはアントニオとの生活で幸せな人生を得たかのように見えます。かわいいカチューシャもいますし。
でも彼女の心の中には「いつかアントニオはイタリアに帰ってしまうのではないか」という不安があったはずです。
不安を日常の中に埋めて生活していたのです。
ジョバンナが表れた時のマーシャは既に覚悟した顔つきでした。くるべき時がきたという心情だったのです。
でも彼女はアントニオを引き留めたかったのです。そのために引っ越しもしました。
何とか気分を変えてジョバンナと再会する前のアントニオに戻って欲しかったのでしょう。
アントニオを帰国させた意図
口にこそ出しませんが、アントニオの心がマーシャたちとの生活から離れてしまったことをマーシャは理解します。
このままではどうしようもないと考えた彼女はアントニオをイタリアに送り出す決断をします。
アントニオが言い出す前に自分からそのように仕向けたのです。
もしアントニオから「イタリアに行きたい」といい出されたらマーシャはヒステリックに拒絶したかも知れません。
彼女の中にはアントニオを引き戻せるという自信も薄々あったのでしょうか。
ジョバンナがマーシャに感じた一種の敗北感をマーシャは敏感に感じ取っていたはずです。
ひまわりの意味
この映画のタイトル「ひまわり」にはどのような意味が込められているのでしょうか。
映画はひまわりの群生映像で始まり、エンディングもひまわりの群生で終わります。
ヘンリー・マンシーニの音楽に映像が重なり感動を呼ぶのです。
よく見ると映像はひまわりの群生から一輪のひまわりへ、また一輪のひまわりからひまわりの群生へと移ります。