可能性はかなり低いと思われますが、ナッシュはドミニカを奪取することもあり得ました。
その場合はロシア情報局にとってドミニカは完全にCIA側の人間となってしまいます。
もはやドミニカはロシア情報局を操ってワーニャを罠にかけることができなくなってしまうのです。
母親の生死も危うくなることは間違いありません。ドミニカとしては、何としてもそのような道は避けたかったのです。
ラストの電話
さて全てが一段落してからドミニカにかかってきた電話が気になるところです。
一体誰からどのような要件でかかってきたのでしょうか。
実はこの映画では電話がポイントポイントで非常に効果的に使われています。
スパローとしての最初の仕事は携帯電話のすり替えでした。
逃走中にも母親に使い捨ての携帯電話で連絡をとろうとしています。
何よりドミニカがワーニャから指示を受けるのは電話だったのです。
電話はある意味ドミニカの自由を縛る一つの象徴だったともいえます。
最後の電話はCIAのナッシュからかも知れませんし、ロシア情報局の誰かだったかも知れません。
いずれにしても一見自由になったかに見えるドミニカに何らかの指示を与え、彼女の自由を縛るためのものだったに違いありません。
最後にバレーダンスを見るドミニカ
ラスト直前にドミニカはバレーを鑑賞します。
何気なく見ていると見逃しがちですが、このシーンには重要なメッセージが込められているのです。
彼女はかつてバレリーナだったのですが、今は女スパイになっています。
どちらも決して自由に動けるわけではなく、実は何らかの力で踊らされていることは同じなのです。
彼女はかつてバレリーナだったときとは異なる目線でバレーを踊るダンサーを見ていたに違いありません。
【レッド・スパロー】は異質のスパイ映画
どちらがだましているのか、だまされているのか気を緩めるとわからなくなってしまいます。
一方でこの映画は極めて個人的なテーマを扱っているという意味で異質のスパイ映画です。
ドミニカは国家のためや組織のために働くのではなく、自分自身や母親のためにあの手この手を繰り出して生き延びようとするのです。
結末に関しては見る人によって解釈が異なるかも知れません。
彼女の意向通りことが運んだのですからハッピーエンドともとれます。
他方、現時点では結局のところ彼女は真の自由を勝ち取れなかったため、必ずしもハッピーエンドでではないという解釈も成り立つのです。