仙堂が殺人鬼になったのは、ファントム・ペインの終わらない苦痛に耐えかねたからだとも読み取れます。
彼は目撃者を生かす特異な殺人によって過去の自分を何人も作り出し、自らの痛みを分散していたのかもしれません。
改正刑事訴訟法について
劇中でも改正刑事訴訟法についての説明が入りますが、もう少し詳しく見ていきましょう。
刑事訴訟法
昭和23年に定められた法で様々なことが記されています。
本作品で重要になる公訴時効について見てみると、下記のように定められていました。
犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると公訴が提起できなくなる制度
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/公訴時効
ここでいう一定期間とは15年を指します。
そして劇中では第5の殺人である1995年の4月27日までが、この刑事訴訟法が適用されています。
改正刑事訴訟法
そして近年DNA鑑定が進む中、犯人を間違うことが少なくなったことを理由に作られたのが改正刑事訴訟法です。
殺人罪・強盗殺人罪などの公訴時効が撤廃され、事件後15年が経過した後も捜査が継続できるようになった。
引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/刑事訴訟法
2010年の4月27日に定められ、翌4月28日から即施行されています。
このことが牧村里香殺人と大きく関係してくるのです。
里香は日付が変わった4月28日に殺害されたので、ギリギリ改正刑事訴訟法が適用されたのです。
刑事訴訟法におけるパラドックス
過去の刑事事件においては発生時から15年で事件が消滅し、犯人が法的に無罪になっていました。
しかし、そこには大きな問題点があります。
時効の元では悪人を裁くはずの法律が、逆に悪人を守ってしまうことになるという点です。
このパラドックスこそ『22年目の告白 -私が殺人犯です-』で最も重要なテーマになっています。
東京タワーの視覚的効果
殺害時に消えていた東京タワーは、作品の大きな視覚的効果を担っています。
ちょうど時効廃止の法律がスタートするタイミングだったのです。
劇中には最初から夜の東京タワーが映し出されており、それからも断続的に挿入されます。
東京タワーは、冒頭からサブリミナル効果のように鑑賞者の無意識に忍び込んでいるといえるでしょう。
伏線溢れる二層仕立てのミステリー
『22年目の告白 -私が殺人犯です-』は、殺人ミステリーとして一級品といえるでしょう。
伏線を充分に張り巡らせた中、誰もがだまされる驚きの真相を二段階で見せてくれます。
豪華な役者の演技からも目が離せない本作は、何度も繰り返し観たくなる作品です。
リピート鑑賞することで新たな伏線や解釈が見つかるかもしれません。