ここでラタンが彼を国外追放してしまう「疑わしきは罰せよ」の姿勢が敗北を招きました。
彼がここで処刑するか、何らかの処罰で許すかしていれば、遺恨はなかったでしょう。
それを国外追放という形で中途半端に生かしたから、裏切る機会を与えてしまったのです。
つまり、このシーンでまずパドマーワティ側の敗北の原因が作られていました。
英雄色を好む
一方のアラーウッディーンもまた女関係で自ら身を滅ぼす原因を作っています。
彼にはメフルニサという配偶者が居るにもかかわらず、それを無視して浮気していました。
パドマーワティだけならまだしも妻を放置して他の女性を抱いていたのです。
「英雄色を好む」といいますが、彼の場合独身でもないのに女に現を抜かしたのが決定打となりました。
しかし、一方でパドマーワティが居たから彼が強くなったというのも皮肉な構造ではあります。
結局の所アラーウッディーンは価値観の根本が間違っているというかズレていたのかもしれません。
女で滅んだ男たち
こうして見ていくと、本作における敗北の理由は女性関係にあることが窺えます。
ラタン・シンとパドマーワティは禁欲過ぎましたし、アラーウッディーンは欲望に忠実過ぎました。
人間の歴史を見ていくと、男性は大体酒か女かが身を滅ぼす原因となっています。
これはいつの時代になろうとも、決して変わることがない普遍の価値観ではないでしょうか。
劇中の設定が昔である故に現代では理解出来ない価値観もありますが、根は簡単に変わらないのでしょう。
味方側も敵側も色欲や裏切りといった人間関係が敗北となって負けているのです。
国家といってもあくまで人間が作り上げるものであり、その宿命から逃れることは出来ません。
馬鹿らしいことを大真面目にやる
こうして見ていくと、本作はやっていることが何とも馬鹿らしいのではないでしょうか。
女に振り回されて身を滅ぼす男たちという構図は見方によっては憐れに感じられます。
しかし、それを大真面目に振り切ってやれば、それはもう立派なドラマとなるのです。
また、それを納得させられるだけの脚本・演出・役者たちが揃っていました。
表面上は確かに時代錯誤な価値観が見受けられる為、批判もあるかもしれません。
それに惑わされず本質をよく見ていくと、実に現代にも通ずる男女の根源が示されています。
大作とはそれ位ぶっ飛んでいる方が面白いということを示しているでしょう。
高尚と低俗の絶妙なバランス
本作をまとめるなら、高尚と低俗の絶妙なバランスで成り立つ作品ではないでしょうか。
脚本の内容は考察していくと、実に低俗ともいえるような内容で物議を醸すでしょう。
しかし、それを役者の演技力とビジュアル・演出力で高尚な物語に仕上げているのです。
つまり、B級グルメの素材を用いてS級グルメに仕上げているという偉業をやってのけています。
近年のボリウッド映画の中でも破格の記録を更新したことが何よりそれを証明しているでしょう。
インド映画はまだまだ終わらないことを示してくれた傑作映画です。