特に小柳が宏嵩に酔っ払いながら放った「丸ごと愛せるだけの度量がなければダメだ」は大きいでしょう。
宏嵩が成海の趣味をより深くまで理解しようと決意し、終盤であの行動を取った伏線になっています。
一方で成海もまた遠く離れてハワイという海外で強面の樺倉達と仕事をし、精神的に鍛えられました。
こうした周囲のアドバイスや経験が2人をして自分たちを客観視させる判断材料になったのです。
距離を取ることも大事
また、お互いが仕事で忙しい時に宏嵩は敢えて連絡を取らず、成海との距離を取って時間を置きました。
成海は不安でやきもきしたものの、結果としてはお互い適切に距離を取って冷静に考えることが出来たのです。
もしここでどちらかが強引に関係を進展させようとしたら、関係性は悪化していたでしょう。
そういう愚行を犯さず、距離をしっかり取ったことでお互いを中立的な立場に戻すことに成功しました。
近すぎず遠すぎず、この絶妙な距離感の保ち方もまた上手く行った秘訣ではないでしょうか。
失敗を教訓化する
そして3つ目に、上記した小柳と樺倉の喧嘩という失敗を教訓化したことが大きいのでしょう。
先輩カップルは相互理解に努めた宏嵩と成海とは違い、自分自身の趣味嗜好を押し付けてばかりでした。
小柳が宏嵩に酔いながら吐いた助言は裏を返せば自分たちにいい聞かせていたともいえます。
その失敗例を見て、2人は自分たちがこうなってはいけないのだということを身に染みて感じたのでしょう。
「人の振り見て我が振り直せ」とは正にことではないでしょうか。
ヲタクの恋は決して難しくない
こうして見ていくと、本作は設定は突飛ながら物語自体は極めて王道的です。
2人はお互いに壁を感じながらも、決して無理をせずしっかりお互いを理解し受け入れる努力をしました。
ヲタクだからというのは単なる思い込みであり、難しくも何ともなく相手に寄り添えばいいのです。
その至極当然の理屈をきちんと実践できるかどうかで恋人になれるかどうかが決まります。
宏嵩と成海はそのことにしっかり気付けたからこそヲタク同士の幼馴染でも恋人になれました。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
本作で示されている恋愛は演出や設定の派手さに対して、本筋そのものは極めて真っ当です。
ヲタク同士だろうと何だろうと、恋愛において大切なものはとてもシンプルなものでした。
しかし、それを頭で条件付けして自分の要求ばかりを押し付けるから上手く行かないのです。
恋愛は頭で考えてするものではないといいますが、それは全ての人間関係にいえるでしょう。
複雑な現代社会の中において、本当に大切なものは何も変わらないと教えてくれた名作です。