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映画『ヲタクに恋は難しい』はふじた先生による一迅社出版の原作マンガを2020年に実写化した作品です。
通称『ヲタ恋』で親しまれており、福田雄一監督が高畑充希と山崎賢人を主演に据えて制作されました。
設定も凝っており、腐女子の桃瀬成海と重度のゲームオタク・二藤宏嵩の不器用な恋愛がコミカルに描かれています。
幼馴染同士が転職先で再会という王道のシチュエーションからとても面白い物語が展開されるのです。
本稿ではラストで成海が宏嵩に抱きついた理由をじっくり掘り下げて考察していきましょう。
また、宏嵩が普通のデートを提案した目的も併せて見ていきます。
原作との相違点
本題を考察する前に、まずは原作漫画と実写版の相違点について考察しておきましょう。
原作との大きな違いはやはり演出面であり、福田監督らしくミュージカル風に仕上がっているのが特徴です。
原作の恋愛エピソード自体はそこまで長いものではなく、ごく短い日常の一環として描かれています。
一方の映画版ではその短いエピソードを抽出し、歌と踊りを足して1つの壮大なラブコメに仕上げているのです。
また、主演の2人をはじめ脇を固めるムロツヨシ・菜々緒・斎藤工らキャスト陣がそれを表現できる人達でした。
原作の魅力を更に演出と役者の力によって大きく膨らましたことが本作の白眉ではないでしょうか。
ラストに成海が宏嵩に抱きついた理由
幼馴染の関係から始まった2人の恋は決して順風満帆だったわけではなく、摩擦や衝突がありました。
2人は終盤に来て公私混同とも取れるような言動・行動によって関係を拗れさせていきます。
その膠着状態に決着をつけたのは成海の抱擁でしたが、ここではその理由を考察していきましょう。
歩み寄り
決定打となったのはやはり宏嵩の成海に対する理解・歩み寄りだったのではないでしょうか。
成海も宏嵩もお互いの趣味や主義主張にこだわりがあり、同じオタクでも重なる部分がありません。
そうなると、どちらかが歩み寄ってそれを受け入れ理解する自助努力をする必要があります。
しかし、2人とも頑固でその辺の折り合いをうまくつけることが難しかったのでしょう。
それを宏嵩が下手に回って受け止め、しっかり理解するという尊いことをしてみせたのです。
キャラ変え
宏嵩が行った歩み寄りとは具体的にいうと、声優アイドルのライブ会場で見せたオタ芸でした。
ゲームオタクで通している彼からすれば、これは本来の宏嵩がやっていることではないでしょう。
しかもそれだけではなく、自室まで成海の趣味に寄り添った萌えキャラのグッズなどを置いているのです。
行動としては極端でなんとも不器用ですが、宏嵩なりに成海の大切なものを理解しようとしました。
言葉に出さずとも、そのような努力をしてくれたことが成海は嬉しかったのです。
成海からも歩み寄る
しかも、この関係性は決して一方的なもので完結するのではなく、双方向性があります。
抱擁の後、今度は2人でゲームセンターへと繰り出すシーンで物語は締めくくられるのです。
これは即ち自分の趣味を理解し受け入れようとした不器用な宏嵩の努力への恩返しでしょう。