しかし、2人は物語後半でお互いの欠点を打ち明けたことで意気投合を果たしたのです。
それが果たされた時点で2人はもうライバルではなく共に痛みを抱えた仲間となりました。
おそらくその時にロクサーヌへの気持ちも雲散霧消したのではないでしょうか。
半端な女性への愛より苦楽を共にした男同士の絆・友情の方が結束力が固いものです。
だからこそ、2人はその後共同でロクサーヌへの手紙を書き続けることを決意したのでしょう。
コンプレックスがシラノの人生にもたらした影響
上記したコンプレックスによりシラノの人生には様々な影響がありました。
ここではその影響について具体的に考察していきましょう。
人の弱さや痛みが分かる
まず挙げられるのは人の弱さや痛みが分かる人間になったということです。
もしシラノが顔にコンプレックスがなければ本当の意味で完璧超人だったでしょう。
しかし、完璧超人だった場合クリスチャンを受け入れられなかったかもしれません。
欠点があったからこそ彼は性格に欠点があったクリスチャン伯爵と打ち解けられたといえます。
人間は長所で尊敬され短所で愛されるといいますが、まさにそれを体現した人たちでした。
ギシュ伯爵の嫉妬
しかし、コンプレックスは決していい影響ばかりを与えたわけではありません。
結果的にシラノ達はギシュ伯爵の嫉妬や恨みを買い、つけ狙われることになったのです。
なまじ2人とも腕が立つばかりにギシュ伯爵はそのことを快く思わなかったのでしょう。
伯爵はそんな2人をロクサーヌから引き剥がそうと無理矢理戦場に送りつけます。
今の時代なら職権濫用として訴えられてもおかしくないことが起こったわけです。
仲良くなれた筈の2人は皮肉にもギシュの謀略によって引き裂かれることになりました。
想定外の恋の行方
そして恋の行方にも実は大きなどんでん返しが起こりました。
それはロクサーヌがクリスチャンの見た目ではなく文才に惹かれたことです。
一見喜ばしいようですが、これは2人にとって全くの想定外に他なりません。
ロクサーヌはクリスチャンの文才に惚れましたが、その手紙は全てシラノが書いたものです。
つまり彼女は無自覚にクリスチャンではなくシラノが好きだと告白してしまいました。
言葉だけのやり取りがかえってそのようなすれ違いを引き起こしてしまったのです。
シラノが嘘をつき続けた理由
上記のような想定外の影響により、クリスチャンはこの世から他界しました。
しかし、シラノはそれでもずっとあの手紙がクリスチャンのものだと嘘をついたのです。
何故そのような嘘を貫き通したのかを考察していきましょう。
戦友との約束
1番大きな理由は戦友にして親友だったクリスチャンとの約束を果たしたのでしょう。