牧生は様々な嫌がらせや凶悪な行為をキラに仕掛けますが、これは恋敵への攻撃と考えればその行動理由に辻褄が合います。
自分を殺しそうになった零に嬉しそうな態度を見せる牧生。
見方を変えれば、これは零が自分に構ってくれて嬉しいとも捉えられる場面。牧生は零に恋をしています。
聖の死因とは
零の弟・聖の死因は何だったのでしょうか。
恋人を奪われた絶望
聖は自分の恋人を零に奪われています。聖が零と仲の良い兄弟だったことは牧生の回想で語られています。
その一番信頼していた相手に裏切られた絶望。それが聖の死因の一つです。
聖は零と異なり内向的な人物でした。零と間反対の性格である故に、二人が互いの無い部分を補い合いながら生きてきた。
互いになくてはならない存在だったからこそ、裏切りのショックはとても大きなものでした。
零にとっても聖の存在が大きかったことは、聖の死を封印して生きようとしていたことからも窺えます。
牧生の行動
聖の死は零に裏切られたショックも原因でしたが、最大の理由は牧生です。
傷心の聖に、牧生は追い打ちをかけるように零への不信感を抱かせる言葉を吹き込みました。
それにより、聖の心は一線を越えてしまい自ら死を選びます。
直接的な死因は飛び降りの衝撃。しかし、最後の一線を越えさせたのは牧生の存在でした。
牧生の心は、いつも零の側にいる聖を許すことができなかった。彼がいる限り零は自分のものにならない。
それが牧生を狂気に走らせました。
愛情の二つの面を持つ映画
零とキラの愛情、牧生から零に向かう愛情。どのような形であれ、それぞれの関係には相手を思う気持ちがありました。
決定的に違うのは零とキラがそれぞれを受け入れようとするのに対し、牧生は相手を自分の望む形にしようとしたことです。
それを愛情と呼べるかは観る人に委ねられますが、愛情は美しい部分だけではないことを本作は伝えていました。
しかし、辛い過去を持っていてもそれでも人は愛情でそれを越えられることもまた示されています。
自分は零やキラの側にいるのか、それとも牧生の側にいるのか。
恋愛に悩んだ時に自分自身の心情と重ね合わせることで、愛情について考えさせられる本作を一度ご覧になられてはどうでしょう。