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【マッチポイント】はウディ・アレンが脚本・監督を務めたサスペンス仕立ての作品です。
人の人生を左右する決め手(マッチポイント)となるのは、目標や計画ではなく単なる運ではないかと我々に問いかけます。
ドストエフスキーの代表作である「罪と罰」が主人公の人間性回復を高らかに綴っていることに対する皮肉が込められているともいえるのです。
それにしてもノラを演じたスカーレット・ヨハンソンのセクシーさは流石といわざるを得ません。
人生を決める運
マッチポイントはバレーボールやテニスなどの球技で、勝負の行方を決定づける最後の得点のことです。
映画【マッチポイント】ではそのマッチポイントは運で決まるのではないかと語りかけています。
ドラマの中の登場人物たちはどのような運に恵まれ、それをどのようにつかみ又はつかみ損ねたのでしょうか。
クリスの場合
テニスの一流プレーヤーとして天賦の才能に恵まれていること自体運がいいといわざるを得ません。
しかもその才能を活かすことによってセレブな人々の仲間入りを果たすのです。
彼が殺人犯として逮捕されなかったのも運のなせる技といえます。
もしも彼の殺人を証明する指輪の落ちる方向が変わっていたならどうでしょう。
また、もしもそれをジャンキーの浮浪者が手にしなければ彼の運命は変わっていたのです。
これら通常では考えにくいとも思われる幾多の運に恵まれることによって、クリスは逮捕されることもなくセレブな生活を続けることになります。
女性から見るとなんて身勝手で都合の良い男と映ることでしょう。「だれかクリスを罰して」という女性たちの声が聞こえてきそうです。
ノラの場合
ノラは人もうらやむ美貌に恵まれました。でも彼女はその運を十分に活かすことができなかったのです。
女優の道もうまく拓くことができず、セレブなトムとの婚約も解消となります。
おまけにクリスの身勝手な欲望の対象になっただけでなく、最後には彼によって殺されてしまいました。
運命の女神が少しでも彼女に微笑むことがあったなら、彼女は幸せな人生を送ることができたはずです。
彼女にはこのような運命に陥らざるを得ない何らかの罪があったでしょうか。ノラは単に運に恵まれなかっただけにすぎません。
クロエの場合
クロエの人生は危ういところでした。一つ間違えば経済的には豊かでも決して豊かとはいえない人生に陥った可能性があったのです。
セレブな家庭に生を受けたことは運がよかったといえますし、クリスという好みの男性と結婚できたことも幸運でした。
しかしながら、クリスがクロエを捨ててノラに走る可能性もありましたし、このまま子宝に恵まれない可能性だってあったのです。
もしクリスが殺人犯として逮捕されたならば、クロエは家族ともどもスキャンダルにまみれたかも知れません。
運命の女神は彼女に微笑みました。彼女はこれからも愛するクリスや一族に囲まれて幸せに暮らすことでしょう。
罪と罰
このドラマはサスペンスとしての娯楽性を持っていますが、一方で罪と罰とはどのようなことなのかという哲学的なテーマも扱っています。