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「ダークナイト」は、バットマン3部作の最高傑作と名高い作品です。
そして、撮影中にジョーカー役のヒース・レジャーが亡くなるという大きな話題を残した伝説の作品です。
悪になり切ったヒース・レジャーの残したセリフや、他のヒーローとは異なるダークヒーロー・バットマンの言動を徹底解明します。
善と悪の境界線は存在するのでしょうか。
また、ゴードン警部補が最後に残した意味深なセリフの謎を紐解いていきましょう。
そして当時のアメリカの時代性を絡め『ダークナイト』を映画史的な観点からも見てゆきます。
さらに映画のテーマをアメリカの正義や悪人の深層心理というポイントから深く掘り下げてみましょう。
バットマンはアメリカを連想させる
バットマンは他のアメコミヒーローとは異なり、闇を抱えたダークな存在です。
正義とは何なのか疑問を抱かせるその姿は、アメリカを連想させるともいわれています。
正義への疑問
2008年公開のダークナイトですが、当時のアメリカは2001年の同時多発テロをかわきりに2003年からイラク戦争を始めました。
その時アメリカは攻撃の理由を「イラクの大量破壊兵器保持」とし、正義の名のもとに戦争を始めています。
しかし結果的に大量破壊兵器は発見できず、国民は国の掲げる正義に疑問を持ち始めます。
正義への疑問が膨らむ中、ダークナイトは公開されたのです。
「ダークナイト」内のバットマンも正義を掲げながら、悪ともとれる行動を行っています。
この姿はまさにアメリカを象徴しているのです。
ヒーローではない正義
バットマンは決して悪ではありません、しかし迷いのない100%の正義でもありません。
殺人の罪をかぶり、世間的には警察に追われる悪の存在です。
また劇中には時折バットマンの持つ「悪」の部分も描かれています。
ヒーローと呼ぶにはダーク過ぎるバットマンの存在は、観るものに正義と悪の境界線を考えさせる構造になっています。
ラストのセリフが示すもの
映画タイトルにもなったダークナイト(暗黒の騎士)の意味は、ラストシーンで明らかになります。
しかしゴードン警部補はどのような想いでバットマンをダークナイトと呼んだのでしょう。
ゴードン警部補がラストを締めくくった理由
ゴードン警部補は柔軟さをもった正義者として描かれています。
少々の悪事には目をつぶりつつ、自分の良心だけは譲らず生きています。
完璧な理想主義者じゃないゴードン警部補は、観るものを代表する存在でもあるのです。
人の踏み外してはいけない道を認識しており、いくら周りが汚職に手を染めようとも彼は道を踏み外さず歩んでいます。
とはいえ悪を根絶やしにしようと理想を掲げている訳でもありません。
そんなゴードン警部補が客観性をもってバットマンに放つセリフだからこそ、観客の心に残っていくのです。
ゴードン警部補のセリフは深い
ゴードン警部補のラストシーンは「ダークナイト」の全てを物語る名シーンとなっています。
彼はヒーローじゃない。沈黙の守護者、我々を見守る監視者。
“暗黒の騎士”(ダークナイト)だ。引用:ダークナイト/配給会社:ワーナー・ブラザース
上記のセリフは、ゴードン警部補が息子に諭す言葉です。
ゴードン警部補は、バットマンが大手を振って民衆にこたえる光のヒーローではないといっています。
ハービーの罪をかぶり警察に追われる身でありながらも、ゴッサム・シティの正義を守ろうとする監視者なのです。
悪がはびこるときバットマンは密かに現れ、彼の方法で悪を消し去るでしょう。
その方法は100%の正義ではないかもしれません。
しかしそれでもいいとゴートンは思っているのではないでしょうか。だからこそダークナイトなのです。
ハービーの罪を背負って悪になった理由
バットマンは人々の期待を裏切らない為にハービーの罪をかぶっており一見すると男気のあるヒーローのようです。
しかし、バットマンは人々の心を守るためだけに罪をかぶったのではありません。
彼は自分の心に潜む「悪」の部分を認識していました。
自分も同じ運命をたどっていたかもしれないという思いがあったからこそ、ハービーの罪をかぶったのでしょう。
この行動には、彼自身が自分をヒーローではないと認識していることが現れています。
ゴードンがラストに放った暗黒の騎士(ダークナイト)という表現こそ、バットマンが思う自分の姿そのものなのでしょう。
善と悪は紙一重
「ダークナイト」は全編を通して、ジョーカーによって正義とは何かを問われています。
バットマンを通して観るものにも問いかける、独特の重さが魅力なのです。
迷いある正義は悪の可能性を秘めている
ジョーカーには全く迷いがありません。言うなれば迷いのない完璧な悪です。
そしてこの揺るぎない悪のジョーカーが、迷いのある弱い正義心を揺さぶってきます。
描かれているバットマンは、正義という名のものに迷いを持つ存在です。
彼がいつ悪に転落してもおかしくない危うさが観るものをハラハラさせてくれます。
ジョーカーは下記のセリフを劇中で語っていますが、これは全ての人間に向けたメッセージにも取れます。
狂気は重力のようなもの。人はひと押しで落ちていく。
引用:ダークナイト/配給会社:ワーナー・ブラザース
正義の心は、状況次第でいつも揺れ動くものです。誰もがみな一瞬で悪へと変貌する可能性を秘めています。
愛は悪に繋がる
ハービーは劇中でヒーローとも呼ぶべき存在として登場しますが、レイチェルが殺され復讐心に捕らわれてしまいます。
愛する思いが強いほど、復讐心は迷いない狂気へと変貌するのです。
もし自分が同じような体験をしたら、どこまで正気でいられるでしょう。正義を語っていられるでしょうか。
正義を試されるシーンもある
劇中では、観るものの正義感を直接試すようなシーンもありました。