出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B08KV238X9/?tag=cinema-notes-22
【劇場版SHIROBAKO】はTVアニメの4年後を描いた、いわゆるその後物語です。
舞台設定は武蔵野アニメーションでTVアニメ版と同じですが、劇場版ではかなりシリアスなアニメーションビジネスの現場が描かれています。
「好きなだけでは十分ではない」という元社長丸川の言葉は、どのような仕事をしている人にも突き刺さる言葉です。
そこにはアマチュアとプロフェッショナルとの厳格な境界が横たわっています。
SIVAという作中劇の主人公に「ジタバタしながらでも未来に向かって歩くしかない」と語らせ、物語を締めくくっている演出は見事です。
あおいが作り直しを提案したわけ
この物語を単なるハッピーエンドに終わらせていないのは、完成間近であったSIVAの作り直しをあおいが提案したことではないでしょうか。
制作に責任を持つ木下が作り直しにゴーサインを出すかどうか揺れ動くシーンは現実のビジネスの世界でもありがちなシチュエーションです。
あおいが作り直しを提案せざるを得なかった心の中に分け入ってみましょう。
元社長丸川のアドバイス
そもそもあおいが武蔵野アニメーション立て直しに立ち上がり、SIVAの制作に元請けとして取り組むことの背中を押したのは丸川元社長でした。
アニメ制作の仕事をやるにあたっては好きなだけでは不十分、後輩たちの道しるべとなるような仕事をする必要があると、彼はあおいに説きます。
このSIVA制作にプロデューサーとして取り組むあおいの頭には常にこの丸川の言葉があったはずです。
そのようなあおいにとっては、それなりにこじんまりまとまっただけのSIVAでは不十分でした。
最後までジタバタとあがきながらより完成度の高い作品を目指すためにラスト部分のダメ出しをすることになったのでしょう。
ジタバタするということ
何かを作り出す作業を経験した人は多かれ少なかれ、それまで作り上げたものを壊す怖さを経験したはずです。
長い時間と労力を費やして積み上げてきたものを壊す作業は、それに携わってきた者にとって恐怖以外の何物でもありません。
しかしながら物事の創造において最大の敵は自己満足なのです。
それまで築き上げてきたものを一度ぶち壊して客観視することが出来なければ新しいものは創造出来ません。
壊す勇気を持った者だけが新しい世界を見ることが出来るのです。
あおいたちはジタバタしながらこれまで築き上げたものを壊して再構築する道を選んだといえます。
SIVAが制作放棄されたのは
あおいたちが元請けとして制作に取り組んだSIVAは、もともと別の会社が制作しようとして放棄された仕掛品でした。
物語では制作放棄した「げ~ぺ~う~」が如何にも悪者のように描かれていますが、果たしてそうでしょうか。
「げ~ぺ~う~」がSIVAの制作を放棄していたリアルな実情に迫ってみましょう。
企業論理
企業は「利益をあげてなんぼ」の存在です。利益をあげない企業はその存在すら許されないことになります。
「いいものを作れば必ず顧客に評価され、儲かる」というのはビジネスの世界では単なる幻想です。