その場で足踏みするのではなく、ジタバタしながらも前に進む必要があることを教えてくれたのは丸川でした。
丸川のカレーライスは常にジタバタしながら前に進んでいた頃のあおいを目覚めさせたに違いありません。
なぜ仕事は好きなだけではダメなのか
この物語の中では仕事に向き合う姿勢が何度も繰り返し問いかけられています。
前社長の丸川は「好きなことを仕事にすることは素晴らしいことだが、それだけではダメだ」と言い切るのです。
なぜ好きなだけではいけないのでしょうか。好きの他に何が必要なのでしょうか。
仕事で食っていくということはどのようなことか考えてみましょう。
趣味と仕事
好きなことをやり続けたいのであれば趣味としてやるしかありません。
やや逆説的ないい方になりますが、本当に好きなものは仕事にするべきではないともいえます。
なぜなら、それが仕事になった途端、幾ら好きなものでもそれは様々なしがらみの中に埋もれてしまい義務化してしまうからです。
締め切りに終われ、自分の意図とは違うものにもパワーを割かなくてはならなくなります。
あれほど好きだったものが気がついたら嫌いになってしまっている可能性すらあり得るのです。
本当に大事なものは仕事にしてしまうと、それを失ってしまうかも知れないことに気づく必要があります。
プロフェッショナルであるということ
プロフェッショナルとして仕事をするということは成果を出すということです。
「頑張りました」「やりがいがありました」「勉強になりました」では、プロフェッショナルの仕事とはいえません。
アニメが商品として世に出され、それができるだけ多くの人の共感を呼び、評価されなくてはいけないのです。
そして何よりも会社に利益をもたらすものになる必要があります。
この物語はプロフェッショナルとして仕事をすることの厳しさをリアルに表現しているのです。
作中ミュージカルの意味は
あおいがSIVAを元請けとしてやるかどうか悩む姿を、この作品は作中ミュージカルとして描いています。
このミュージカルはあおいの頭の中の葛藤を描いているのです。
彼女がこれまで取り組んできたアニメの主人公たちが彼女の背中を押します。
それはあおいにこれまでやってきたことを無駄にしてもよいのかと問いかけているかのようです。
【劇場版SHIROBAKO】はリアルなお仕事の流儀を教えている
この作品は仕事とは何か。そしてプロフェッショナルとして仕事に取り組む厳しさと意味をも問いかけています。
完成度を高めるということとビジネスの間には葛藤が存在するのです。
ビジネスの観点に立てば、無尽蔵にリソースを使って完成度を高めればよいというものではありません。
しかしいい加減なところで妥協してしまえば、顧客の心を引きつける成果は得られないことになります。