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【夜は短し歩けよ乙女】は森見登美彦の長編小説を湯浅政明監督がアニメ映画化したものです。
スピード感あふれる展開と独特なタッチのアニメーションが印象的な作品になっています。
一夜の物語として描きながら、一夜のうちに春夏秋冬と季節が変化しそれぞれの季節毎にエピソードが表現されるという凝った展開です。
この物語の重要なキーワードは「ご縁」です。全てのエピソードや人々がご縁によってつながっていくことになります。
さて、黒髪の乙女と先輩の恋の行方や如何に。
乙女が「ラ・タ・タ・タム」を探していた理由
この物語では乙女が子供の頃に持っていた「ラ・タ・タ・タム」という絵本が重要な役割を果たします。
この絵本が乙女と先輩の仲を取り持ったといっても過言ではありません。
では乙女はなぜこの絵本を探すことになったのでしょうか。
「ラ・タ・タ・タム」が持つ魔法の力を見てみましょう。
思い出したのは偶然
この物語では偶然と必然がごちゃ混ぜになって、一つの結論へと導かれていくこになります。
その結論とは勿論乙女と先輩の恋の成就です。
乙女が古本市のチラシを見ることになったのは偶然といえます。
そして古本市で幼い頃大事にしていた「ラ・タ・タ・タム」という絵本を思い出したのも偶然といえば偶然です。
最終的にこの絵本は先輩が苦労の末に手に入れることになります。
そこには先輩の何としても乙女の気を引きたいという強い思いがありました。
これは先輩の意志であり、ある意味必然の結果として「ラ・タ・タ・タム」は乙女の手に渡ることになります。
そもそも乙女の行動は基本的に本能の赴くままという感じで、まさに偶然の成り行きに任せて人生を歩んでいるのです。
ところがこの「ラ・タ・タ・タム」という絵本だけに関しては、何とか手に入れたいという強い意志を感じます。
乙女自身もこの一夜で徐々に変わりつつあったのです。
「ラ・タ・タ・タム」はご縁の象徴
「ラ・タ・タ・タム」がなければ乙女と先輩が結びつくことはありませんでした。
そして「ラ・タ・タ・タム」が乙女の手に渡るまでには実に多くの人たちや事件が関わることになったのです。
李白が古書収集をしなければ先輩にこの絵本を手に入れるチャンスはありませんでした。
また、東堂や学園祭事務局長の情報がなければ先輩が「ラ・タ・タ・タム」を手に入れようと思わなかったはずです。
そういう意味では「ラ・タ・タ・タム」は様々な人と人をつなぐご縁の象徴になっているといえるのではないでしょうか。
先輩は誰のために激辛我慢比べ大会に出場したのか
先輩は極めて論理的で目的意識の強い性格です。乙女に対するナカメ作戦は如何にも作為的です。
ナカメ作戦で外堀を埋めた先輩がいよいよ本丸に攻め込むために選んだのが「ラ・タ・タ・タム」入手作戦です。
事務局長や東堂の情報をもとに先輩は李白が主催する激辛我慢大会に出場する羽目になってしまいました。