しかし先輩は李白が「ラ・タ・タ・タム」を所蔵していることを知ることになり、出場目的が「ラ・タ・タ・タム」入手に変化しました。
運命が先輩を乙女へと導いているとしか思えない展開になっていくのです。
論理と必然にすがる先輩
この時点で論理的必然に頼る先輩の行動指針は怪しくなっていきます。
春画入手目的のために参加した我慢大会が、やがて「ラ・タ・タ・タム」入手目的に変化しました。これは突発的な偶然です。
そもそも先輩が「ラ・タ・タ・タム」入手に動くことになったのも事務局長からの偶然的な情報入手が要因でした。
全て計画づくの先輩も一夜の出来事で徐々にご縁の中に取り込まれていくのです。
ご縁とつながり
この物語の重要なテーマはご縁とつながりで、ご縁とは一体何なのかが問いかけられています。
何かのご縁を大事にして決して作為的に行動しない乙女と常に計画づくの作為的な先輩が、様々な人たちとのご縁によってつながっていくのです。
ではご縁とは辞書あるように単なる巡り合わせだけなのでしょうか。
この物語ではご縁は偶然だけでなく人の作為をも包み込んだ形で成立していくことが明らかになっていきます。
ご縁は偶然と必然のたまもの
偶然だけでは人と人が結びつくご縁は得られません。
偶然の巡り合わせだけを行動原理とする乙女が必然的なものにこだわる先輩の作為的な行動によって新たなご縁を獲得していくのです。
先輩もまた乙女の成り行き任せの行動によって自分の計画とは異なった形でご縁を獲得しました。
偶然と必然の両方がなければ人と人が結びつくご縁は得られないのです。
恋はご縁とつながりの究極
運命の人との出会いはご縁によるつながりに他なりません。
人の人生は自分と他者がご縁によって出会い、それが絡み合うことによって一つの布に織り上げられるようなものです。
その究極が恋愛ではないでしょうか。
ご縁がなければつながりはなく、そのご縁は巡り合わせだけでは得られないのです。
そこには先輩のような作為をも包み込んだ人知を超える大きな力が働いているのかも知れません。
二人を結びつけたものは
乙女と先輩は様々なご縁によって最終的に結びつくことになりました。
二人を結びつけたものは一夜の多くの人たちとの出会いともいえます。
二人が過ごした一夜には春夏秋冬がありました。日常では普通起こりえない様々な出来事が起こったのです。
二人は不思議の国のアリスのように別世界に迷い込んだのではないでしょうか。
この別世界での一夜の経験は無意識のうちにそれまでの二人を変えることになったのです。
この二人の変化こそがお互いを結びつけることに大きな役割を果たすことにつながったといえます。
二人の何が変わったのか
では二人の何がどのように変わったのでしょうか。
何とっても先輩にとって大きかったのは、彼がこれまで持ち得なかった勇気を獲得したことです。