娘たちは自分のことに精一杯で時生のことまで考えられませんでした。
こうした家族の理解の足りなさが時生をさらに追いつめました。
静花が哲男を受け入れた真意
ずっと哲男を拒否していた静花はなぜ最後にその思いを受け入れたのでしょうか。
哲男のことが好きだった
拒否し続けながらも、静花はずっと哲男のことが好きであったと考えられます。
それは静花がずっと結婚をしなかったことからも伺うことができます。
静花は梨花と哲男の結婚生活が上手くいっていない理由をわかっていました。
しかし自分の足のことを思うと胸に秘めた気持ちを表に出せません。
それが婚約祝いのパーティーにまで乗り込んでくる真っすぐな哲男の思いに触れ、ようやく覚悟を決めることができたのです。
哲男を放っておくことができない
哲男は北朝鮮の帰国事業に申し込みをしていました。別れてしまえば二度と会うことはできないかもしれません。
哲男はそれだけの覚悟を持って静花に思いを伝えたのです。
幼い頃からずっと自分のことを考え続けてくれた哲男。だらしない部分もある男です。
その純粋さとダメな部分を兼ね備えた姿を静花は放っておくことはできませんでした。
その気持ちから、静花は哲男の気持ちを受け入れたのです。
本作が伝えるもの
本作は一見デリケートな問題に踏み込んでいるようですが、描かれているものはどこの国でもある普遍的なものです。
恋愛・結婚・いじめ・別離と新たなる出発は決して特別なものではありません。
敢えて誰しもに共通する身近な出来事を軸に据えたことで、本作は人間は皆同じであることを伝えています。
もちろんそこには、日本には確かにこうした歴史もあったのだというテーマも添えられています。
家族の繋がりとは何か、絆とは何かを本作は真正面から描いているのです。
当たり前すぎてつい見過ごしがちになりますが、その普遍的な問いに国境はありません。
本作を鑑賞した後は自分と家族の繋がりについて考えてみる時間を設けてはいかがでしょうか。
これからの人生がより深いものになるでしょう。