幼いカールにとっては、彼らの異様な姿は恐怖に他ならなかったでしょう。
だから、常に色々なことに怯えているカールの恐怖のイメージがあの黒い影になりました。
そう考えれば、ドイツから遠く離れた日本で影に打ち勝つことができたのも辻褄が合います。
カールが働く日本は、彼にとって大切な場所ということなのでしょう。
幻影が見えるようになったのはなぜか
カールが幻影を見えるようになったのはなぜだったのでしょうか。
精神が深刻に病んでいた
理由として考えられるのが、カールの精神が深刻に病んでいたことです。
両親が死んでから、カールは酒に溺れていました。そんな彼に味方するものは一人もいません。
妻子とは離れ離れであり、実の兄弟とも仲違いをしてからこちらも離れ離れです。
カールには相談できる相手もいなければ逃げ込める場所もありませんでした。
日本で働いているはずなのに、友人や会社の同僚がまったく登場しないのも彼の孤独を物語っています。
カールを苦しめ続ける圧倒的な孤独。
逃げ場がない状況であることも重なり、精神が深刻に追い込まれていた結果幻覚が見えるようになったと推測できます。
霊感があった
後に明かされるユウの正体から、カールと父親のルディは霊感を持つ可能性があります。
もしもそれが事実であれば、黒い影は紛れもなく本物の悪霊となります。では、なぜ悪霊が見れるようになってしまったのでしょうか。
やはり、カールの心が弱ってしまったことに原因がありました。
心が弱っている時に、邪悪な気に付け込まれることは心霊話でたびたび語られることです。
元々霊感のあったカールは、過度なストレスにより悪霊に狙われることになってしまいました。
突拍子もない考えに思われるかもしれませんが、本作がホラー要素も含んでいることを考えれば決して飛躍した話ではありません。
カールが黒い影に打ち勝てた理由
カールはなぜ黒い影に打ち勝つことができたのでしょうか。
聖なる旅館
カールが訪れた茅々崎館は、美しい庭園を持つ旅館です。
そこは美しくはあっても苦い思い出のあるドイツと比べて、カールが心から落ち着ける場所でした。
ビンを抱いて眠るようなカールの日本の自宅は、落ち着きからは程遠い雰囲気です。
常にユウと行動し、家族と向かい合わなければならなかったドイツの場面はどことなく忙しない印象がありました。
一方で茅々崎館の場面は対照的に、ゆったりとした空気が流れています。まるで、邪気から人々を守る聖地のようです。