出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B084S1YN2B/?tag=cinema-notes-22
【ブラック・クランズマン】は人種差別という非情に重いテーマを扱った作品です。
刑事ドラマのスタイルをとりながら、実は社会的な問題に鋭く切り込んでいます。
一方で社会派のシリアスなドラマかと思いきや、至る所にギャグがちりばめられたりしているのです。
この作品は実話を題材にしたものですが、映画作品として見事に脚色されているといえます。
しかしながらラストでは作り物の映画ではない現実のアメリカ社会が抱えている深刻な現実を我々に突きつけているのです。
ロンとパトリスの部屋をノックしたのは誰
事件が一件落着し、ロンがパトリスを口説こうとしている部屋を誰かがノックします。
ロンとパトリスは思わず銃を構えますが、ドアをノックしたのは一体誰なのでしょうか。
巧みなカメラワークで画面はいきなりKKKが十字架を燃やしている場面に移り、我々を緊張感の中に誘うのです。
アメリカ国旗の意味
ロンとパトリスの部屋をノックしたのはアメリカ社会の現実そのものです。
KKKの企みを失敗に導き、人種差別的な警察内部の人物も追放し、KKKのリーダーを痛烈に笑い飛ばして物語は終わりではありませんでした。
部屋の外ではKKKが十字架を燃やし、何とそこには仲間であったはずのフリップが白い覆面を被って参加していたのです。
アメリカ社会の現実は何も変わっていませんでした。
社会の分断は見かけ以上に深刻で、表面上見分けることが難しい現実があります。
エンディングシーンのアメリカ国旗は上下が逆になっていました。
そして最初はカラーであった国旗は次第にモノクロ化していくのです。
これはアメリカ社会・国家への痛烈な批判ではないでしょうか。
表面上は平等を装いながら、底辺で人種差別を容認し続けるアメリカ社会や国家に対してダメ出しをしているのです。
アップされたKKKメンバーは
十字架を燃やす儀式に参加しているメンバーの一人にカメラが向けられ、次第にズームアップされます。
彼は確かに見覚えがあります。どうみても同僚警官のフリップではありませんか。
彼はロンとともにKKKを出し抜く作戦に参加し、危険と勝利をともにした仲のはずです。
そんな彼はKKKのメンバーの一人でした。
何とアメリカ社会の分断は深刻なのでしょうか。信じられるものはどこにあるのでしょう。
十字架を焼くKKK
なぜKKKは十字架を焼くのでしょうか。
勿論これはKKKの儀式の一環ですが、十字架を焼くという行為にはイエス・キリストに対する誓いの意味があるのかも知れません。
十字架を輝かすという意味で火をつけているのです。
KKKはキリスト教福音派を中心とする白人至上主義者の集まりといえます。
キリスト教への熱狂は他者の排除を誘導し、自分たちと価値観を異にする他者への憎悪にもつながっているのです。