神のもとでの平等を説くキリストを思えば、何とも皮肉な現実がそこには横たわっています。

ラストの実写映像が意味するもの

black lives matter

この作品のラストではアメリカで実際に起こったヘイトクライムへの抗議者たちと白人至上主義者たちとの衝突が実写映像で流されます。

とても常識では考えられない暴力行為が現代社会の白昼に紛れもなく行われているのです。

アメリカ社会の理想はどこに行ったのでしょうか。

この作品は作り物ではない実写映像をラストで流すことによって、アメリカ社会の現実を我々に突きつけているのです。

誰も満足な答えを持たないこの現実に人類は向き合っていけるのでしょうか。

それぞれの差別感覚

差別

アメリカ社会は多民族国家です。世界中の国から移民の形で様々な人種の人たちが集まって国家を作っています。

この物語では色んな背景を持つ人が登場し、それぞれの主義主張のもとで人生を送っているのです。

ここでは、ロン、パトリス、フリップの三人をとりあげて、人種差別に関するそれぞれの考え方やアプローチを見てみましょう。

ロン

ロンはこの物語の主人公です。黒人警官でありながらKKKという白人至上主義者の結社に潜り込むという離れ業を仕掛けるのです。

彼は一見社会の黒人に対する差別にさほど強い抵抗感を示していないように見えます。

でも果たして彼の内面はその通りなのでしょうか。

ブラックパワーを唱える黒人の集会で彼はリーダーの演説に対して熱心に聞き耳を立てます。

KKKのリーダーであるデュークへ吐く罵りの言葉も芝居とはとても思えない辛辣さです。

マスコミに登場するヘイトクライムに抗議する黒人たちは皆好戦的にみえます。

でもひょっとすると実際にアメリカ社会で白人たちと一緒に生活する黒人たちの多くは違うのかも知れません。

ロンのように煮えたぎる反抗心を持ちながら、表面上はどちらかといえば飄々と生活をおくっている人が多いのではないでしょうか。

パトリス

パトリスは典型的なブラックパワー運動のメンバーです。

直接的に白人たちへの嫌悪感と反抗心を示します。このため白人至上主義者たちに狙われやすいのです。

そんなパトリスにロンはぞっこんで、彼はパトリスの嫌いな警官という身分を隠して彼女と付き合おうとします。

物語の中でパトリスはロンに命を救われますが、彼女はそのような経験をしても自分の主張を変えることはありませんでした。

彼女はこれからも白人たちの差別をものともせず、色んなことを犠牲にしながらブラックパワー運動を続けて行くのでしょうか。

フリップ

フリップはユダヤ人です。ユダヤ人も黒人と同様KKKの標的になっています。

彼らはキリスト教福音派の白人至上主義者たちに敵視される立場にもかかわらず、黒人の人々を差別するのです。

さらにその黒人たちはアジア系の人々に蔑視の目を向けるという、なんともはやアメリカ社会の分断は手のつけようがない状態といえます。

フリップは表面上差別されることへの反抗姿勢も、黒人を差別する態度も一切見せません。

そのフリップが実はKKKのメンバーの一員なのです。

彼の心の闇は想像するだにおぞましいといわざるを得ません。

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