ショウには魔剣たちを邪悪な手から奪い・守り・封印するという崇高な目的意識があります。
その正義のためなら利用できるものは利用し、できることは何でも実行するという強い意志があるのです。
その強力なカリスマ性はムツたちの共感を呼び、そしてフヨウをも巻き込んでいくことになります。
フヨウの決意
皇女の愛の巣から出奔したフヨウには3つの道が選択可能でした。
勿論どの道を選ぶかによってフヨウの将来は決定的な違いが出てくることになります。
彼はどの道を選んだのでしょうか。その道を選んだ背景にも迫ってみましょう。
3つの道
1つ目の道は皇女の元に帰る選択です。
彼がその気になれば可能だったにもかかわらず、それまで皇女の元を去ろうとしなかったのは理由があります。
1つは皇帝の前で音楽を披露することが愛する母の望みだったことです。図らずもフヨウはそれを実現しました。
もう1つはフヨウ自身皇女の愛を受け入れる心の準備ができていた可能性があったことです。
2つ目の道は人との接触を断ち、獣たちを相手に歌い続けることでした。
一人になった際に聞こえる謎の声も最近は聞こえなくなっており、フヨウはその恐怖におびえることもなくなっていたからです。
最後の道はムツやショウたちと行動を共にする選択でした。
これまでのように何者かに庇護され流れに自らを委ねるのではなく、確固とした自分の意志を持って自立するという道がそこにはあったのです。
自立を選んだフヨウ
物語の展開としては最後の道を選択することがある意味必然でした。
母の教育や皇女・ムツ・ショウの出会いの全てがこのフヨウの自立を準備していたといえます。
彼は「自ら自分の柄を握る」という表現をしました。
彼の音楽そのものが一つの刃であるならば、それをコントロールするという意味で「柄を握る」という表現は的を射ています。
謎の声
いつからかフヨウが一人になると謎の声が聞こえてくるようになったようです。
この声の主は一体誰なのでしょうか。
そして、やがて声の主は実体化することになりますが、その意味にも迫ってみましょう。
声の主は
謎の声はフヨウの内面の声だったのではないでしょうか。
彼はそのような別の自分自身が心の中に潜んでいることを恐れたのです。
自覚している自分以外の自己が存在することは確かに不気味で、恐怖感すら感じることでしょう。
人は全ての外部刺激を人格に取り込むわけではなく、自分では認めたくない外部刺激は心の奥に封じ込めるのかもしれません。
フヨウにも押し殺した別の自己が存在したのです。