雨は幼くしておおかみとしてひとり立ちします。
あなたにお母さんらしいことをまだなにもしてあげていない
引用:おおかみこどもの雨と雪/配給会社:東宝
花が雨にいった言葉です。
自分の子供に色々と教えてあげたい、何かをしてあげたいと思うのは母親として当然のことです。
しかしここで花は悟ったのです。
おおかみとして生きると決めた雨にしてあげれることはもうない……。
おおかみは自分の配偶者を見つけるために、親元を離れていきます。
人間の感覚では10歳というと、まだ親離れする歳ではありませんが、おおかみとして生きるのなら早くはない親離れです。
花は、おおかみとして生きる雨を受け入れたのでしょう。
そして子離れするという辛い決心をしたはずです。
子供を信じて送り出すことは、母親にとって身を引き裂かれるほどの勇気がいる行為ではないでしょうか。
子離れすることは、大きく成長した母親の姿でもあるのです。
花の姿は監督の思う母親像
花は母親という強い存在で描かれています。
しかし決して理想の人生を送っているわけではありません。
疎外感を感じるシングルマザー
花は当初周囲の理解を得られず、ひとりで子育てに苦しみます。
育児放棄をしてもおかしくない精神状態に追い込まれながらも、必死に雨と雪を守り抜いていくのです。
ここには母親としての愛と強さが見て取れます。
ネグレクトを疑われながらも、社会の溝に落ちることなく自分達の居場所を見つけ出しました。
母は成長するもの
本作には女性が母となり、様々な困難に見舞われながらも成長していくということがしっかり描かれています。
頼りない少女だった花が、穏やかな表情を見せる母の顔になってく……。
母親とはこうあるものだという監督の理想が垣間見えます。
受け入れることが描かれた作品
13年間を描いたこのストーリーは、雨が山に雪が中学校の寮に入ることで終わりを迎えます。
子供たちの主体性を尊重し、覚悟を持って受け止め成長を見守っていく強い母の姿が描かれていました。
受け入れることを問いかける本作品は、観る者の立場よって意見の分かれる多様性を含んでいます。
時代を経て何度も観返したく映画ではないでしょうか。