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【ネタバレ】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド徹底解釈!つまりあの映画はなんだったのか?

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B07W8LJ6JY/cinema-notes-22

クエンティン・タランティーノ9作目となる作品は、彼のハリウッド愛、映画愛に加えオタク心と遊び心が爆発した一作となりました。

タイトルには童話の昔話を始めるにあたっての決り文句「ワンス・アポン・ア・タイム・・・」(昔々あるところに・・・)が使われています。

これはすなわち、本作がタランティーノ流の「童話」「ファンタジー」であることを示唆しています。

タランティーノの近作に比べ、さらに「遊び」とプロットの多い長い映画になった上、半分あたりまでストーリーらしいストーリーがありません。

これによって、この映画は一体何を言いたいのか?と戸惑う人も多いのではないでしょうか。

そこで、ここでは「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」でタランティーノが表現したかったことは何か、を読み解いていきたいと思います。

フィクションが持つチカラ

タランティーノの作家性

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「ハートフル・エイト」「ジャンゴ 繋がれざる者」「イングロリアル・バスターズ」というタランティーノの近作の系譜をみると、見えてくるものがあります。

それは社会性(黒人差別、人種問題、ナチに代表される不寛容など)を外していないということです。

またスプラッタともいえるような過激なバイオレンスの後ろにはタランティーノなりの「弱者への視点」が必ずあることを見逃してはならないでしょう。

彼はその問題点を、よく出来た構造の物語に置いた上に魅力的な俳優を配し、独特の斜に構えた視点から料理して訴えかけてくるのです。

提示する社会性とは必ずしも政治的に解決が必要なものとは限らず、今回の作品のように私たちの身近にあって「もやもやしている問題」も含まれています。

本作ではそれが「シャロン・テート殺人事件」におけるマンソン一味に対する精算だったと考えて良いでしょう。

またディカプリオ演じるリック、ブラッド・ピット演じるクリフという二人は架空ですが、他の主要登場人物は基本的に実在の人物です。

こうした虚構と現実をミックスすることによって「現実に近い夢物語」を極めて高い次元で実現しているといえるでしょう。

それが大きく感じられるのがシャロン・テートが自分が出演している「サイレンサー第4弾/破壊部隊」を一人映画館で観ているシーンです。

スクリーンを観ているのはマーゴット・ロビー演じるシャロンであるものの、彼女が観ているスクリーンに映っているのは本物のシャロン。

マーゴットのシャロンの幸せそうな表情を観る観客は、恐らく不思議な幸福感を受けるのではないでしょうか。

このシーンではタランティーノのシャロンに対する愛情を強く感じます。その感情はラストに待つ大事件を読み解く重要な鍵となっているのです。

このシーンにおいてシャロンと幸福感を共有しておくことはラストに向かっての物語を理解する上で極めて大切なポイントになるのです。

「復讐」

Revenge

さらにもう一つ。「復讐」というキーワードを見逃すわけにはいきません。

「復讐劇」の決着は映画の王道的カタルシスです。タランティーノの作品も形はどうあれ、「復讐」への収斂という形が近年多く見られます。

ラスト近くで必ず繰り広げられる血だらけのバイオレンスは観客に「イケイケ」のカタルシスをもたらす事でしょう。

正義(とは限りません)が勝つ瞬間に溜飲を下げることを決して否定はしません。

しかし、タランティーノの主張はもう一段深いところにある、とみるべきではないでしょうか。

それを観客それぞれが想像・妄想する。

それがタランティーノ映画を観る楽しみの一つとなっています。

こうして「作り物」(フィクション)を極めて上手く構成することにより、人間の本性や、社会的問題点を突いてみせるのです。

これはタランティーノが映画の持つフィクションのチカラを心から信じているからといえるでしょう。

1969年のハリウッド

時代と映画の大転換点

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タランティーノが選んだ大好きなハリウッドの時代は1969年でした。なぜこの年を選んだのでしょうか。理由は大きく2つあります。

一つは、この年が時代と映画の大転換点に当たるということです。

アメリカ国内では、ベトナム戦争は泥沼化し、前年にはロバート・ケネディとキング牧師が暗殺されています。

加えて公民権運動のさらなる隆盛など混沌とした時代でした。

社会的にも若者を中心にこれまでの古い価値観を否定するカウンターカルチャーが支配的になっていました。ヒッピームーブメントもその一つでした。

ハリウッドでは…

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ハリウッドに目を向けると、本作にも描かれるようにテレビの時代を受けて映画は凋落していた時代でした。

カウンターカルチャーに影響を受けた若い監督らに活躍の場が結果的に与えられる状況が生まれました。

彼らは低予算でこれまでのハリウッド映画の文法をことごとく否定する作品を作りました。

この年のアカデミー賞ノミネート作品をみると一目瞭然でしょう。

「真夜中のカーボーイ」「明日に向かって撃て」「イージー・ライダー」「アリスのレストラン」「ワイルド・バンチ」「さよならコロンバス」。

いわゆるアメリカン・ニューシネマの傑作がずらりと並びます。

主人公は誰?

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前述のような時代背景に乗せて本作の物語は進みます。

リックは時代の大転換に乗り遅れつつある往年のテレビスター。子役の少女に慰められて喜んだり、すぐに泣くような「陰でウエットな存在」。

片やクリフ。リックのスタントマンであるものの彼自身も仕事が無く今や運転手兼マネージャーのようなことをしています。

しかし戦争を経験してきた彼はどこか人生を達観している節があります。

ハリウッドの世界では影の存在(役割)なのですが、クリフは楽しそうな毎日を送っています。「クール。陽でドライな存在」。

そしてシャロン。「昔話」的にいうならお姫様なのでしょう。事実ミニスカートにブーツのシャロンはまるで無垢なバービー人形のようです。

彼女にはほとんど重要なセリフがありません。つまりストーリーに絡ませていないのです。憧れのお姫様なのですから。

当時既に大スターで国民から広く愛されていたスティーブ・マックィーンにシャロンを褒めさせるという演出もなかなか憎い手法です。

シャロンは結末に向けて、リックとクリフの視線の先にある「未来を絶たれた天使」として描かれています。

こうしたメインの2人+1人の(ポスターに大きく描かれている3人)によって物語は一応進行はしていきます。

しかし特に前半は小ネタ的プロットの積み重ねで映画がどこへ進むのか、主人公は誰なのかが判然としません

ここでみなさんはハタと気がつくはずです。

この映画の主人公は

「1969年のハリウッド」

に他ならないと。

リックやクリフ、そしてシャロンも「1969年のハリウッド」の一部に過ぎず、言いすぎかも知れませんが、3人とて借景の一コマと見えてくるのです。

その主人公たる「1969年のハリウッド」は8月9日の夜に起きた事件へと収斂していくわけです。

その夜にこそタランティーノの大きな野望が置かれていました。

「1969年のハリウッド」に命を吹き込む二人

【映画パンフレット】ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

先程この映画の主人公は「1969年のハリウッド」だ、といいました。このテーゼに命を吹き込んだのが、ブラッド・ピットとディカプリオでした。

多くの映画ファンは、ブラッド・ピットとディカプリオを同じ画面で観ることができる日がこんなに早く来るとは思っていなかったのではないでしょうか。

それぞれが主役を張りヒット映画を製作することが出来る「華麗な大輪の花」を豪華にも本作のメインキャストに据えました。

この事により本作の色彩が一層鮮やかになりました。「1969年のハリウッド」に命が吹き込まれた、といってもいいでしょう。

それと同時に大胆な「歴史改変ファンタジー」でもある本作が彼らの存在の重さと確かな演技によって上滑りしない「華麗な重厚さ」を獲得しました。

「スパーン映画牧場」の重要性

ラストへ向けた引き金

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クリフが街頭に立つプシーキャット(これもスゴイ名前です)に誘われてたどり着いた「スパーン映画牧場」。

クリフはかつてここで映画を撮ったりスタントの仕事をしていた思い出の地でした。そして牧場主は世話になったジョージがいるはずでした。

しかし周りを見ると出てくるのはヒッピーの姿をした娘や髪の毛が長い男だけ。ヒッピーのコミューンとなっていたのでした。

しかもシャロン・テート殺害事件を起こしたマンソン一味のアジトのようです。

たらたらしていた映画は、ここから物語が一気に進行し始めます。

クリフのクルマがパンクさせられた意味

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観客は8月9日に結末がやってくることはあらかた知っています。映画に時間が表示されるのは、ラストへのカウントダウンを予言するものです。

この映画牧場に巣食うマンソン一味の不穏さのシークエンスは観客をサスペンスフルな状況へと誘います。

ひょっとしたらクリスが殺されるのではないか、とハラハラするところです。

タランティーノは重要な役者であってもあっけなく殺してしまうので、観客は気が気ではありません。このあたりもタランティーノの演出が光ります。

結局ジョージは目がほとんど見えなくなっていたもののヒッピーたちの世話になって生きていて、クリフの身には何も起きませんでした。

ジョージが盲目になっていたこと、これにもこれまでの、そしてこれからのコンテキストを振り返りまた予想すると、様々な想像が膨らみます。

リックは牧場から去る時、嫌がらせにクルマのタイヤをナイフでパンクさせられた事に気が付きます。

すると彼はこのことに異常なほど腹を立て、犯人のヒッピーを容赦なくボコボコにします。

小さな出来事ですが、このシーンはラストに向けた伏線のひとつになっています。

この「スパーン映画牧場」のシークエンスは、タランティーノが最終的に訴えたい事の大きな伏線となっています。

きわめて重要な場面だということを見逃してはならないでしょう。

タランティーノ的愛情+復讐の怒涛のラスト

その手で来たか!

Pig Sharon Tate

ラストシークエンスではタランティーノらしい過激なバイオレンスが爆発します。

リックの家に押し入って来たヒッピーたちに手加減しない暴力を見舞います。女であろうが、頭を押さえつけて、壁や暖炉にぶつけ続けます。

観ている方が、もういいよ、といいたくなるバイオレンスが炸裂。完膚なきまでに容赦なくにヒッピーを打ちのめします。

プールで浮き輪に乗って酒を飲んでいたリックの所に飛んできたヒッピーの女を彼は映画の小道具の火炎放射器で丸焼きにしてしまいます。

この火炎放射器は伏線として前半にリックの映画(「イングロリアル・バスターズ」を連想させています)に使われたナチを焼殺した小道具でした。

特にクリフの容赦ないバイオレンスは、これまでの論拠から理解出来る通り、タランティーノの一大復讐シーンに他なりません。

よくも愛しのシャロン(お姫様)を惨殺しやがったな、このヒッピー野郎!」という。

大根だったかも知れませんが、女優として純粋に成長を夢みていたシャロン、もう少しで母になろうとしていたシャロン。

タランティーノは、そんなシャロンの未来と夢を断ったヒッピー野郎たちを絶対に許せなかったのです。

故に事実を改変してこうした童話を仕立てあげ、シャロンの魂を救ったということが出来るでしょう。

加えてクリフの暴力がヒッピーの女から貰ったLSDにラリっての行動であることがアイロニーとして光っています。

作られたハッピーエンド

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やがて警察がやってきて、銃で足と腹を撃たれたクリフは救急車で病院へ。

ここで再びクリフとリックは友情を確認し合います。(いいシーンです)

その後クリフはなかなか行けなかった隣のポランスキー邸に行き、お腹の大きいシャロンと対面し客として邸内に招き入れられるのでした。

シャロンには未来が与えられたのでした。

これが歴史を改変してでも成し遂げたかったタランティーノの最終的な野望だったわけです。

めでたし、めでたし。“They lived happily ever after”

タランティーノのオタク的隠し技

音楽とラジオの使い方

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タランティーノは本作を制作するに当たり、ロスのAMラジオ局で1968~9年の放送を16時間聴きまくりました。

そして、その本物の放送の音をドライブシーンや劇中に効果的に使っています。

BGMとして聞こえてくるラジオDJの声やジングルは当時の時代の雰囲気を盛り上げるのにピッタリの役割を果たしました。

またこの映画には当時のポップスやロックがたくさん使われ時代のムードを「上げて」います。

オープニングはロイ・ヘッド&ザ・トレイツ。ラストシークエンスには思い入れたっぷりの「カリフォルニア・ドリーミン」。

意味深長な選曲ですがオリジナルのママス&パパスではなく、哀愁を帯びたホセ・フェリシアーノを使うひねり振りです。

その他にも有名な曲でもオリジナルを使わないとか、外した曲を使ってみるとか、タランティーノのオタク心が伺える選曲です。

登場人物へのこだわりと伏線

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中盤にブルース・リーが登場します。タランティーノのブルース・リー好きは「キル・ビル」を観るまでもなく有名なところです。

当時ブルースは運転手カトウ役で出演していたTVシリーズ「グリーン・ホーネット」が終了し、ハリウッドでアクションの先生のような仕事をしていました。

シャロン・テートにもクンフーなどのアクションの手ほどきをしています。

彼女が自分が出ている映画を観る「サイレンサー第4弾/破壊部隊」でも本物のシャロンはブルース譲りのキックを披露しています。

しかし本作でのブルースはあまりいいヤツには描かれていません

実際のブルースがそうだったようで、タランティーノは主人公たる「1969年のハリウッド」に真実味を出すため、そんな演出をしたようです。

ポランスキーも同様な描かれ方です。

以上のような事柄は全部ラストに向けたシャロン・テートへの愛情を補強するための演出と思えるのです。

クリフの愛犬「ブランディ」の重要な暗喩

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ラストのバイオレンスシーンでヒッピーを噛みまくり大活躍するクリフの相棒アメリカン・ピット・ブル・テリアの「ブランディ」

クリフの愛犬として彼の自宅であるトレーラーハウスで共に生活しています。

「ブランディ」はラストでは凶暴化するのですが、普段は大人しくてクリフの言うことをよく聞く良い犬です。

この犬のキャラクターが、「この飼い主にしてこの犬あり」的な暗喩を感じさせる存在でラストシーンにおいて生きてくる伏線といえるでしょう。

(写真の犬は「ブランディ」ではありません)

「ブランディ」はカンヌ国際映画祭でパルム・ドッグ賞を受賞しました。

引用/Wikipedia:「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」の項目より

ところでトレーラーハウスに帰ったクリフが「ブランディ」にドッグフードを与えるシーンは、タランティーノらしい意味のない?長回しが現れるところです。

ドッグフードの与える様、自分の雑な食い物をつくる様、モノクロテレビの画面のアップ、周りにある雑誌を映し出す様。

あまり意味があるとはいえないカットがだらだらと積み重ねられますが、これらから嫌な感じを受けることはないのです。不思議なことに。

いや、実はこれにより先述したように「ブランディ」とクリフのキャラクターの暗喩的同化をさり気なくみせているのかも知れません。

結局この映画はなんだったのか?

映画 ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド 約90cm×60cm シルク調生地のアートポスター 07 レオナルド・ディカプリオ レオナルドディカプリオ ブラッド・ピット タランティーノ ワンスアポンアタイムインハリウッド

この映画には様々な論評が加えられています。それだけ観る人により受ける印象の異なる映画なのでしょう。

タランティーノの映画をどれだけ観てきたか、という点でも印象は異なります。

1969年のアメリカ、カウンターカルチャーをどう理解しているかでも受け止め方は違ってくるでしょう。

また「シャロン・テート事件」についてどう解釈しているか、についても視点が変わってくるかも知れません。

しかし多くの論者の結末は「鑑賞後は幸福感に包まれた」という点に収斂しているようです。

歴史を改変してでもシャロン・テートを救い出しヒッピーに鉄槌を下したかったタランティーノ

彼女に無かったはずの未来を与えたかったタランティーノ。

本作のハッピーエンドは、主役である「1969年のハリウッド」が抱えた過去を(リックとクリフの将来を含め)精算し、未来を与えるものでした。

それを実現させるために、タランティーノは当時の町並みを正確に作り出しました。

さらに登場人物や写り込む様々なガジェットで「時代という主人公」を補強し、凝った音楽でさらに雰囲気をドライブさせたのです。

このようにして様々なアングルからくどいほど過去を覗き込み、ラストでは一気に未来への希望を解放したのではないでしょうか。

タランティーノからのメッセージは「ハリウッドは夢舞台」でなければならない、という事ではないのか、という思いが強く滲んできます。