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町に入ってくるクルマや人は意味がわかりますが、町から出ていく場合はただの板が3枚ならんでいるだけ。
これらはミルドレッド、ウィロビー署長、ディクソン巡査という三人の主要人物を表しているようです。
彼らには表もあれば裏もあるという意味合いのメタファーの役割を担っています。
そこから昇華される「一人の人間の中にある善と悪、暴力と寛容、怒りと赦し・愛」という主張を表していると見ることが出来ます。
そして看板をミルドレッドに貸した広告会社のレッドの立ち位置もとても重要になってきます。
レッドとウィロビー署長の立ち位置
看板を貸したのは
ミルドレッドに看板を貸したのは町の小さな広告会社を経営するレッドという男。
彼はその事でレイシストで署長に心酔するディクソン巡査（ロックウェル）にボコボコにされてしまいます。
さらに、窓から放り出されて大怪我を負って入院してしまうのです。
このレッドという男の存在はサイドストーリーのようであって実は極めて重要なのではないかと思えてきます。
何故なら、ミルドレッドに看板を貸し、署長を非難するメッセージを出せば町がどうなるか、というのは彼にも分かっていたはず。
ディクソンにボコボコにされて入院しているところへディクソン本人が大ヤケドで入院して来ます。
しかし自分に大怪我を負わせた彼をレッドは赦すのです。
そこから見えることは、レッドの価値観は終始揺るがない、自分の軸がブレないということです。
そして怒りをコントロールし、赦す。
ユダに対するキリストのような印象すら受けます。
これはミルドレッドに非難されたウィロビー署長の立場とも共通しているでしょう。
ウィロビー署長の役割
住民から厚い信頼を寄せられるウィロビーは自ら不治の病を抱えながら、非難してきたミルドレッドの行為に一定の理解を示してくれます。
一方でレイシストで暴力的なディクソン巡査を何とかいっぱしの警官にしようと努力しているのです。
感情のままに動く周囲とは一線を画した冷静さが、暴力や憎悪の連鎖を断ち切るパワーを感じさせます。
レッドとウィロビー署長の存在は怒りに身を任せるミルドレッドとディクソン巡査をひときわ際立たせる役目を担っています。
こうして2つの人間の属性を明確にすることにより、他の人間の持つ本質に迫っていきます。
ミルドレッドとディクソン巡査の共通項
実は似た者同士？
敵対しつつ、最終的にはあっと驚く展開の中、お互いを見つめ直すミルドレッドとディクソン巡査の変化がクローズアップされていきます。
しかし、彼ら二人には共通することがあります。
ミルドレッドは娘を殺してしまったのは自分だ、という負い目から自分を責めています。
心の中に負の力学が大きく作用しています。
片やミズーリ州の不寛容な田舎っぺ、負け犬、ヒルビリーであるディクソン巡査。
ウィロビー署長や彼の後任の新しい署長から、ダメをだされ昇任試験にも落ち続けるという自他ともに認めるダメ警官です。
それを自覚していて鬱積したものが暴力や差別へと向かう、これまた負の力学の中に身を委ねています。
二人は共通した「負の力学」に突き動かされているのです。
ウィロビー署長の手紙
