少し前までは当たり前のようにそこにいた太一が今ではいなくなってしまった、という切ない気持ちが表現されています。
この歌には会いたいという気持ちも含まれているので、千早は太一に側にいて欲しいと感じているのでしょう。
「こいすてふ」は劇中の重要歌
小倉百人一首の41番の短歌「こいすてふ」は、劇中でのキーアイテムになる歌です。
まずはこの歌が誰の心境を示しているのか確認していきましょう。
壬生忠見の歌
こいすてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
引用:ちはやふる 結び/配給会社:東宝
人に知られないように恋をしているのに、いつの間にか世間の噂になっていた、と歌っています。
自分では恋心を隠しているつもりでも、周りからはバレバレということもよくあります。
そしてこの句は次に紹介する「しのぶれど」とは因縁の対決をする歌なのです。
千早への告白をした新の歌
思い切り告白をしているので密かにではありませんが、この歌は新が千早に告白をしたことを示しています。
この告白が思いの他、かるた界で話題になってしまったのです。
「しのぶれど」は「こいすてふ」の因縁歌
小倉百人一首の40番の短歌になります。
こちらも劇中で重要な歌となっているものです。
平兼盛の歌
しのぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
引用:ちはやふる 結び/配給会社:東宝
恋をしている事をずっと内緒にしていたけれど顔や行動にでていた、と歌っています。
他の人に恋をしているのですか?と聞かれてしまうのですね。
人に問われて初めて自分の恋心に気が付いたという意味も含んでいます。
そしてこの歌は上記の「こいすてふ」の歌と歌合せの席で1000年前に対決しているのです。
結果は双方甲乙つけがたく引き分けとなっています。
千早を思う太一の歌
これまで千早への恋心を隠しながら過ごしてきた太一は、新の告白に動揺を隠せません。
実際に薫には自分の気持ちを見透かされています。
そして、劇中後半の全国大会でのこった札が「しのぶれど」「こいすてふ」だったのは見事な演出です。
「花の色は」は周防の歌
小倉百人一首の9番の短歌である「花の色は」は、世界三大美女に称えられる小野小町の有名な歌です。
桜の花に自分の姿を重ねた切ない歌として愛されています。
小野小町の歌
花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせしまに
引用:ちはやふる 結び/配給会社:東宝
桜の花の色がむなしく色あせてしまう様子は、私の美貌が衰えるのと同じだと歌っています。
絶世を極めた美女も時間の流れには逆らえず、衰えるという意味を含んでいます。