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【古都(2016)】舞と結衣の存在が体現する「古都」とは何かを読み取ってみよう!過去作との違いについても徹底考察する

出典元:https://www.amazon.co.jp/dp/B01N49VS5V/cinema-notes-22

「伊豆の踊子」「雪国」等で知られる文豪・川端康成の「古都」、本作品は小説のその後の世界を映画化した作品です。

名作は過去にも映画作品やドラマ作品として上映されています。

『古都(2016)』と過去作との違いを考察しながら、舞と結衣の存在が体現する古都とは何か、じっくり紐解いていきましょう。

過去作との違い

古都 [VHS]古都は川端康成の名作小説ですが、岩下志麻や山口百恵主演によって過去に映像化されています。

今作品は過去作品とは何が違っているのでしょう。

過去作品は小説に忠実な世界

過去の作品は川端康成の小説に沿ったストーリーとなっています。

本作で母親として登場した千恵子と苗子の少女時代が中心となった話です。

過去作では身分の違いからも一緒に暮らせない儚さとふたりの健気さが前面に出ています。

川端康成がこの作品を書いたときの意図としては、変わりつつある京都の姿を残すことにあったそうです。

2016年版は「その後」の物語

本作は千恵子と苗子の少女時代から時代が進み、彼女達のその後を描いた物語となっています。

千恵子と苗子、そして彼女たちの娘である舞と結衣を中心に話が進みます。

世界観も日本を離れパリを舞台にするなど、グローバル化された内容となっていました。

過去作とは古都の捉え方が違う

古都

過去作との大きな違いは、古都の捉え方ではないでしょうか。

過去作にみる古都

川端康成が描く古都では、本作の回想シーンでもあったように生き別れた双子が祇園祭の夜に偶然出会い、心を通わせます。

一緒に暮らすことは出来ない寂しげな姿と京都が彩る四季や風景を美しく映し出すものとなっていました。

「変わりつつある京都の姿を残す」という目的の為にも京都の町屋の風景などにフォーカスを当てて制作しています。

古き良き時代の京都の街並みを堪能できる映画でもあるのです。

変わっていく京都の風景

本作品では、時間の経過と共に変わっていく京都の姿が描かれています。

町屋自体が減ってきてしまっている、という現代の特色も作品の中にて取り入れられています。

とはいえ、過去作に取り上げられている京都の美しい文化もしっかりと残しています。

変わってしまう京都の風景と、変わらない京都の美しい文化を時代に寄り添って作り上げられたのが、2016年の『古都』なのです。

舞の体現する「古都」

1000ピース 京の町屋 (50x75cm)

千恵子の娘である舞は、京都で悩む少女です。

そんな彼女はどのように「古都」を体現しているのでしょう。

京都の現在の姿

京都は日本の古都であり、美しい街並みが世界から注目されています。

しかし現実は昔なじみの老舗がどんどんと閉店していったり、立ち退きを迫られたりと厳しくなっています。

外国人へ向けた町屋ツアーを開催したり、千恵子が着付けのパートに出ているシーンもあることから呉服店一本では生活できません。

現実社会では、町屋もホテル建設のために取り壊されるなどして問題になっています。

彼女の未来への不安

【日本の風景ポストカード】京都祇園の町並み風景 はがきハガキ葉書2013年

呉服屋の娘である舞は、昔からの呉服屋を継ぐという重圧を背負っています。

舞の姿はまさに現代の若者で、失われつつある伝統を継ぐという選択に悩んでいます。

彼女は実家をいずれは継ぐべきだと頭では理解しつつ、やりたいことが見つからないまま全てが嫌になってしまいます。

友人が就職活動に失敗ばかりしている中で自分だけは苦労せずに決められた道を進むことも辛かったのでしょう。

古都を残すとはどういうことか考えさせられるシーンです。

外に出ることで古都の良さを知る

一度も京都から出たことのない舞に、パリへ行くことを勧める竜助が京都人について話すシーンがあります。

京都の人間はほんまもんに囲まれて目は肥えてる。

京都から出てみんと何がしたいとか、何がやりたいかわからん。

引用:古都/配給会社:DLE

幼少期からさまざまな習い事をしてきた舞にとって、その日々は当然でありながらも窮屈なものだったのでしょう。

書道の先生と訪れたパリで見事な日本舞踊を披露した時に、舞ははじめて自分がどうあるべきかを悟ったのではないでしょうか。

外から、京都の文化に触れて気づくことが出来たのです。

外の世界に出て京都を見たことにより、再度京都へと戻ることを決心したのです。

この舞の経験は、古都の辿るべき姿ではないでしょうか。

観光地として開発が進む中、何を残すべきか何を作らないべきか外の世界をみないと気が付かないのです。

離れてみて初めて分かる古都の良さは、本来あるべき古都の姿なのではないでしょうか。

結衣の体現する「古都」

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パリへと留学している結衣はパリという古都で悩んでいます。

パリは現在もフランスの首都であり、そこには京都とは違った古都が残されていました。

古き伝統の息づくパリ

パリは京都と違い、現在も首都として息づいてる古くからの都です。

結衣が学んでいる絵も古くからパリで愛されていました。

モンマルトルの丘などは有名画家たちがアトリエを構えた場所として現在も愛されています。

結衣はこの町で古都とは何かを体現しています。

友人の言葉

過去の出来事もすべて今に繋がっている

引用:古都/配給会社:DLE

学校の友人が上記のように伝えてくれますが、この時の結衣の心には響きませんでした。

しかしこのことはまさに古都の姿です。

今が存在するために過去がある、古都はただ古い町という意味ではありません。

古くからの伝統が生きている街という意味なのです。

京都の絵を自由にかくという心理

【フランスの風景ポストカード】エッフェル塔のあるパリ景色43(白黒) のはがきハガキ葉書

結衣は自由に故郷の京都を思い出し、作品に活かすことが出来ています。

彼女はパリへ来て、パリの風景を描き周囲の期待に応えないといけないというプレッシャーから解き放たれました。

この時技法も無視した独特な描き方で杉山を描き賞賛を浴びています。

古きものを大切に想いながら、自由な発想で前へ進む姿は古都パリの姿そのものです。

母親たちの葛藤も古都を体現している

 古都 [Blu-ray]

本作では娘たちの葛藤が見事に描かれていましたが、娘を想う母親たちの葛藤も見どころとなっています。

自分たちが出来なかったことを娘にさせる

千恵子はお店を継ぐという選択肢しか持っていませんでした。

好きなようにしたらええ

引用:古都/配給会社:DLE

千恵子のいった上記のセリフは、娘舞に自由な選択肢を与えた言葉です。

呉服屋を継いでもらいたい気持ち、娘に自由に生きて欲しい気持ちが切に伝わります。

一方苗子は貧しい家庭で成長してきました。

現在も決して裕福な家庭ではありませんが、一人娘の結衣をパリに絵の勉強の為に留学させています。

自分が苦労してきたからこそ、娘にはやりたいことをさせているのでしょう。

帯に託された想いが伝統を紡ぐ

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娘ふたりが京都を素敵なものだと思い返すシーンでは、それぞれ母親から北山杉の帯についてのエピソードを聞いた後でした。

それぞれが家宝のように帯を大切に扱ってきたのです。

自分の娘ぐらいの年齢の頃の話で、娘が悩んでいるのと同じように、自分もひどく悩んだという話も伝えます。

大切にしてきたものだからこそ、先のことを考えてほしい娘にこの想いを託したのです。

ふたりの母親の想いを、娘が引き継いで新たにそれぞれの想いを乗せることで伝統が引き継がれていくのでしょう。

鴨川とセーヌ川が描く2つの【古都】

【フランスの風景ポストカード】パリの風景はがきハガキ葉書Paris2008年

鴨川沿いを走りぬける舞の姿とセーヌ川沿いを走る結衣の姿が、姉妹都市でもある京都とパリの古都としての比較で映されています。

双子のそれぞれの娘が、それぞれの悩み・葛藤と戦いながら古都の中で生きていく様が対比されているのです。

そんなふたりが最後に顔を合わせるシーンは千恵子と苗子が世代を超えて再び交わっているようです。

ここで過去作とのつながりを感じることが出来ますね。

古都を通して錯綜する悩みや現実、娘たちと母親たちの想いが重なった瞬間でした。

新たな古都の姿を描いた作品

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本作品は過去作のその後を描いていましたが、古都のかかえる問題も浮き彫りにしていました。

古都へのそれぞれの想いをのせた名作となっています。

伝統とは何か、引き継がれるものとはなにかを考えさせられる映画です。

映画を観てから京都を訪れると、違った視点で古都が映るのではないでしょうか。