彼女はパリへ来て、パリの風景を描き周囲の期待に応えないといけないというプレッシャーから解き放たれました。
この時技法も無視した独特な描き方で杉山を描き賞賛を浴びています。
古きものを大切に想いながら、自由な発想で前へ進む姿は古都パリの姿そのものです。
母親たちの葛藤も古都を体現している
本作では娘たちの葛藤が見事に描かれていましたが、娘を想う母親たちの葛藤も見どころとなっています。
自分たちが出来なかったことを娘にさせる
千恵子はお店を継ぐという選択肢しか持っていませんでした。
好きなようにしたらええ
引用:古都/配給会社:DLE
千恵子のいった上記のセリフは、娘舞に自由な選択肢を与えた言葉です。
呉服屋を継いでもらいたい気持ち、娘に自由に生きて欲しい気持ちが切に伝わります。
一方苗子は貧しい家庭で成長してきました。
現在も決して裕福な家庭ではありませんが、一人娘の結衣をパリに絵の勉強の為に留学させています。
自分が苦労してきたからこそ、娘にはやりたいことをさせているのでしょう。
帯に託された想いが伝統を紡ぐ
娘ふたりが京都を素敵なものだと思い返すシーンでは、それぞれ母親から北山杉の帯についてのエピソードを聞いた後でした。
それぞれが家宝のように帯を大切に扱ってきたのです。
自分の娘ぐらいの年齢の頃の話で、娘が悩んでいるのと同じように、自分もひどく悩んだという話も伝えます。
大切にしてきたものだからこそ、先のことを考えてほしい娘にこの想いを託したのです。
ふたりの母親の想いを、娘が引き継いで新たにそれぞれの想いを乗せることで伝統が引き継がれていくのでしょう。
鴨川とセーヌ川が描く2つの【古都】
鴨川沿いを走りぬける舞の姿とセーヌ川沿いを走る結衣の姿が、姉妹都市でもある京都とパリの古都としての比較で映されています。
双子のそれぞれの娘が、それぞれの悩み・葛藤と戦いながら古都の中で生きていく様が対比されているのです。
そんなふたりが最後に顔を合わせるシーンは千恵子と苗子が世代を超えて再び交わっているようです。
ここで過去作とのつながりを感じることが出来ますね。
古都を通して錯綜する悩みや現実、娘たちと母親たちの想いが重なった瞬間でした。
新たな古都の姿を描いた作品
本作品は過去作のその後を描いていましたが、古都のかかえる問題も浮き彫りにしていました。
古都へのそれぞれの想いをのせた名作となっています。
伝統とは何か、引き継がれるものとはなにかを考えさせられる映画です。