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2016年に公開された『リップヴァンウィンクルの花嫁』は岩井俊二監督による映画です。
『花とアリス』で、その映像と音楽の美しさを評価された監督による本作は大きな反響とともに迎えられました。
また複雑に絡み合う登場人物たちの物語や世界観は、さまざまな謎や憶測を呼んでいます。
真白の幸せの限界の真意、そして真白が七海を道連れにしなかった理由はなんだったのでしょうか。
クライマックスの安室の涙が本物かどうか含め、『リップヴァンウィンクルの花嫁』に込められた物語を紐解いていきます。
幸せの限界の真意とは?
あたしにはね、幸せの限界があるの。
これ以上無理って限界。
引用:リップヴァンウィンクルの花嫁/配給会社 東映
真白が死の直前に七海へ語った「幸せの限界」にはどのような真意が込められているのでしょうか。
お金で買える幸せ
真白はお金という対価を支払って幸せ、そして人からの優しさを手に入れようとしてきたと考えられます。
事実、自分とともに死んでくれる人までも1000万円かけて安室に手配させていました。
また、真白自身の自己肯定感の低さというのはお金で買える幸せという考えに大きな影響を与えていると推測できます。
これは真白が親から十分な愛情を注がれなかったことが理由なのではないでしょうか。
真白の母が遺骨の受け取りを拒否していたという関係性からもそのことがうかがえます。
お金に代えられない幸せ
初めはお金をかけて安室に手配させた七海との生活。
しかし2人で過ごす時間を重ねるうちに、お金に代えられない幸せというものに気が付いたのではないでしょうか。
屋敷の庭で2人で水を撒いて掃除するシーンや花火をするシーン、はては買い出しから自転車で帰る何気ない日常にも幸せはあるのです。
幸せの限界
本作における「幸せの限界」とはそれ以上幸せを受け止めることができない状態を意味すると考えられます。
そしてお金に代えられない幸せは、お金で買える幸せとは違い簡単に受け止めきれなかったのです。
幸せに飢えていたがゆえにそれを受け入れるキャパシティが小さすぎた真白。
末期ガンによる余命が迫るなか、愛に包まれた幸せの絶頂の中で死んでいったのではないでしょうか。
なぜ真白は七海を道連れにしなかったのか?
死の直前、真白が一緒に死んでくれるか問いかけた際に七海は「はい」と答えます。
では、なぜ真白は七海を道連れにしなかったのでしょうか?
答えはお金に代えられない幸せを育んだ「無償の愛」であると推測できます。
雇い主が真白であることに気が付いた七海はそれでも真白と一緒にいることを選びました。
そしてメイドを辞めると宣告した七海からお金とは関係のない「無償の愛」を注がれた真白は、お金に代えられない幸せを感じます。
真白から七海へも「無償の愛」を感じていたからこそ、真白はひとりで死ぬことを選んだのではないでしょうか。
七海の離婚を仕組んだのは誰なのか
黒木華演じる七海は何者かによって仕組まれた浮気が原因で夫の鉄矢と離婚させられてしまいます。