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クロード・ルルーシュと盟友フランシス・レイの「名刺代わり」の一作であり1960年代のフランス映画を代表する作品「男と女」。
映画を観たことがなくても、あの有名なスキャットが流れるサウンドトラックは耳にしたことがある人は多いと思います。
「切なくてお洒落な大人の恋愛映画」の代表格でもあり、映像と音楽とロケーションの幸せなマリアージュとなった本作。
時代を超えて今なお多くの人から愛され続けている作品でもあります。
クロード・ルルーシュの名前を一躍世界に知らしめました。
本作はカンヌ国際映画祭グランプリ(パルムドール)、アカデミー賞脚本賞、外国語映画賞、ゴールデングローブ賞など多数の賞を獲得。
この作品の特徴的な映像表現と、描写された男と女の世界を詳しく観ていくことにしましょう。
破産寸前だったルルーシュ
この映画が私を救った
20歳代の頃から映像作家を目指して活動してきたルルーシュですが、なかなか目が出ず苦労していました。
1966年の「男と女」もスポンサーが集まりません。
そこでテーマ曲でスキャットも歌い、出演もしているピエール・バルーらの協力も得て自主製作とし、自ら撮影も担当し完成させました。
本作は、封切り前の作品を審査するカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルムドールに輝きました。
さらに公開後の作品を審査するアカデミー賞でも脚本賞と外国語映画賞を、またゴールデングローブ賞など数々の賞を獲得。
この映画はルルーシュを一躍フランス映画界の寵児へと押し上げたのでした。
ルルーシュは後に、この映画が無ければ今の私は無かっただろう、「男と女」は私を救ってくれた映画だ、と語っています。
時あたかも映画の世界はニューシネマの時代。ルルーシュは「遅れてきたヌーベルヴァーグ」に数えられる事もあります。
フランシス・レイもまた
音楽を担当したフランシス・レイはヌーベルヴァーグの旗手といわれたゴダールの映画でデビューし、2作目でルルーシュの作品を手がけます。
本作ではサンバやボサノバも大きく取り上げられています。
一方で、フランシス・レイの紡ぐ詩情豊かにして色彩とフレンチの香り豊かなオーケストレーションはルルーシュが創り出す映像に見事にマッチしました。
その後二人は「パリのめぐり逢い」「白い恋人たち/グルノーブルの13日」とヒットを飛ばし、レイは映画音楽の巨匠としての地位を固めていくことになります。
彼はその後ハリウッドに進出。1970年には「ある愛の詩」でアカデミー賞作曲賞に輝いたのです。
映像作家としてのルルーシュ
計算されたカットの集合体
映画冒頭の、アヌーク・エーメが幼い娘に「赤ずきんちゃん」を語って聞かせる港の光景。
セリフが先行し画面は霧がかかった海からパーンすると、そこに母娘の姿があり、背後には赤い屋根の小屋が。
そしてドーヴィルの港に帰ってくる帆の付いた船。エーメの湖風に吹かれる髪と横顔。
もうトップカットから溜め息が漏れるような美しい描写です。
この映画は全編自らキャメラを回しているルルーシュの計算されたアングルで構成されています。
1つのシーンでも、フィクス、パーン、ドリー、トラック(移動)ショットと多彩です。
後述しますが、これにニュアンスを演出する多様な色彩とレースシーンのリアルな映像の挿入を絡めます。
更にセリフを抑制して音楽を活かし、まるで一遍の抒情詩のような仕上がりとしたのでした。
ルルーシュがやりたいことのすべてが表現された世界、とも言えるでしょう。
趣味性が高い映像を使って
クルマは第三の主人公
ルルーシュは大のクルマ好きとしても知られ、クルマはこの映画の大きなガジェットとなっています。
ジャン=ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)の職業がアメリカのフォード社のテストドライバー。
彼が所有するのは赤いフォード・マスタングのカブリオ(オープンカー)です。