その不満と焦りは、友人が他の居場所を見出し、自分の元から去っていくのでは、という恐れから生まれたものです。
ヴァネロペにとってのラルフとは
前作ではラルフのおかげでヴァネロペは大好きなレースに復帰することができました。
ですがヴァネロペはコースを全て把握し、決められたコースを走るレースに対し段々と嫌気が差してきます。
ヴァネロペにとっても、ラルフはかけがえのない存在です。
けれどもラルフの存在の大切さよりも、繰り返しの日々に対する退屈さの方が勝ったのです。
二人の関係は、現実にもよく見られる?
「今の日常が好きで変えたくない人」と「今の日常に退屈し新しいものを探す人」。
このような人たちは現実の社会でも多く見られるのではないでしょうか。
恋人であったら別れる原因にもなりうるし、友人であるなら疎遠になる原因にもなりうるものです。
最近のディズニー映画では現実的な側面が描かれることもしばしばあります。
例えば『アナと雪の女王』の悪役ハンス王子です。
ハンス王子は王国を奪いたいと考えたのではありません。
自らに皇位継承権がないため、王になるには違う国の王女と結婚するしかないと考えたのです。
ハンス王子の行ったことはどうあれ動機は非常に現実的であり、人間の歴史の中でも行われたことでしょう。
ディズニー映画といえば「ファンタジー」というイメージが強いですが、実は現実的な側面も持っています。
「君がいるから、自分の道を歩んでいける」
ラルフとヴァネロペはウィルスからお互いを助けるために決断を下します。
ラルフは「ヴァネロペの夢を尊重し、自分の道を歩んでもらうこと」。
ヴァネロペは「夢を諦めて、ラルフと共にいること」です。
これこそが今作のテーマといえるでしょう。
前作で紡いだ二人の友情というのも不変のものではなく、またずっと一緒にいることが友情の証ではない。
「親友がいるからこそ、自分の道を信じて歩いて行ける」。
友情を深掘りしたディズニーが『シュガー・ラッシュ:オンライン』で伝えたかったテーマです。
『シュガー・ラッシュ:オンライン』に込められた想い
常に時代の潮流を捉えるディズニー映画
ディズニー映画といえばその時代の価値観に合った女性像を描いてきたことで有名です。
『白雪姫』や『シンデレラ』で登場するプリンセス達は、基本的に何もせず王子様が助けにくるのを待つのみです。
しかし『リトル・マーメイド』からはより活発的なプリンセス、自ら行動するプリンセス像が主流となります。
そして『アナと雪の女王』では、従来ディズニーが取り上げ続けた男女の愛ではなく、姉妹愛をテーマとしました。
このようにディズニーは常に時代背景を捉えてプリンセスを描き続けました。
ヴァネロペにはどんな時代背景が映し出されているのか
今作でも同様です。
ヴァネロペは「親友と一緒に過ごす日常を選ぶべきか、自分が本当に進みたい道を選ぶべきか」ということで苦悩します。