命を落とすかもしれない上に、こんなに狭い艦内に押し込められる乗組員のストレスは相当なものだったはずです。
不衛生な生活
最初からラストまで見ると、乗組員たちの見た目がどんどん変化していくのが印象的。
どんどん服は薄汚れ、ヒゲも生やしっぱなしになる乗組員たちの姿はとても悲惨です。
また、途中乗組員たちの中には毛じらみに感染する人も出てきます。更にはカビがたくさん生えたパンを食べる人も…。
ヴェルナー少尉が映画の中で、自分の日記に悪臭に耐えられないとメモをするシーンがありますが、その不衛生さも監督はリアルに描きたかったのです。
極限状態の人間心理
本作品は実際にUボートに同行した経験のあるブーフハイムが取材した内容を基に作られています。
そのため、そこで描かれている乗組員たちの心情がとてもリアルに伝わってきます。
戦争という、自分も命を落とすかもしれないという極限状態の人間心理は胸に迫るものがあります。
潜水艦の中で息を潜めている時の恐怖
劇中で最もハラハラするのが、乗組員たちが敵の船と接近した時だったのではないでしょうか。
徐々に大きくなるソナー音に、乗組員たちの動悸は激しくなり、冷や汗が額をつたう緊迫した瞬間です。
何度も攻撃を受けるうちに発狂しそうになる乗組員や恐怖に耐えられず、艦長の命令に従うこともできなくなった乗組員もいました。
敵国の人たちを見てショックを受ける乗組員
途中、U-96は敵国の船を破壊。乗組員たちは自分たちの船の上部から、敵国の船が沈みゆく姿を見ていました。
どんどん沈む船。そして、そこから何とか生き延びようと火をまとった敵国の人たちが海へと落ちていきます。
いくら敵対する国の人とはいえ、自分たちと同じように必死に生きている人間。
命を落としていく彼らを誰も助けようとはしません。U-96の若い乗組員たちはその姿にショックを受け、涙を流す人もいます。
戦争中でも、人の死というのは人間をこんなにも絶望に突き落とすものだということが分かるシーンです。
壮絶なラストは何を意味しているのか
映画『U・ボート』が高く評価されているのは、壮絶なラストシーンが1つの理由となっていると考えられます。
最後に、そのラストを通じて監督が観る人に伝えたかった想いについて考察してみました。
救いようのないラスト
通過することが、かなり難関だといわれているジブラルタル海峡。U-96の乗組員たちは、その恐怖に怯えます。
その不安が的中し、敵から攻撃を受けるU-96。水圧に耐え切れるか分からない中、潜水艦は水深280メートルの海底に達します。