それでも艦長は諦めることなく見事に潜水艦を修復させ、水上まで戻ることができました。
助かったことを喜ぶ乗組員たちは、フランスにあるラ・ロシェルの港に到着。そこでは彼らを待ち受けるパレードが開催されていました。
しかし、その瞬間上空から敵の攻撃を受けます。次々に命を落としていく人たち。
ヴェルナー少尉は何とか命拾いをしますが、彼が目にしたのはU-96が海へと沈む姿を見届けた後に息を引き取った艦長の姿です。
絶望してその場にしゃがみこむヴェルナー少尉の姿が映し出され、この物語は幕を閉じます。
この救いようのないラストシーンに多くの人は衝撃を受けたのでした。
実際の出来事とは違うラスト
実は、この救いようのないラストは実際のU-96の最後の姿とは異なっています。実在したU-96は無事に港に帰還します。
そして、艦長のモデルとなったヴィレンブロック大尉という人物も戦争を生き抜いているのです。
敢えてラストを変えた監督はどんな意図を持っていたのでしょうか?
戦争を決して美化しない
このラストシーンには、戦争を決して美化しない監督の姿勢が表れています。
一見すると、命を落とすかもしれない状況から這い上がったU-96の乗組員たちはヒーローのような扱いを受けるかもしれません。
しかし、実際には戦争はそんな美しいものではないのです。彼らもまた、敵国の人たちの命を奪った人間でもあります。
無情に命を奪い、奪われる…それが戦争の姿。
監督は奇跡の帰還をラストに裏切ることで、映画を観たすべての人に「戦争はこういうものだった」ということを伝えたかったのです。
また、この作品を通してなんでも自由に手に入る今の世の中しか知らない世代への戒めのようなものも感じます。
人生を自分で選択するも、与えられるものの方が遥かに大きいのが今の世の中です。
選ぶ権利も与えられず、逃げも隠れもできない状況の中で生きなければいけなかった人たちがいたことを、忘れてはいけないのです。
そして実際の戦争を知らない人たちが増えている今だからこそ、この映画のように戦争を美化しない作品が必要なのではないでしょうか。