主人公ビリーの父ランダルは増殖した5匹のモグワイを見て、こう言います。
新発売。ペルツァーペットだ。こりゃあ売り出せばでかい商売になるかもな。
引用:グレムリン/配給会社:ワーナー・ブラザース
このランダルのふとしたセリフに、商売人としての欲がにじみ出ています。
ランダルは『ギズモ(新製品)』の名付け親でもあり、なんでも商品に見立てているような節があります。
増殖したモグワイ達には、ギズモにあった素直さや純粋さが欠けています。
それはまるで不良モグワイといったところです。人間の欲に触れるとモグワイは邪悪さを増すのかもしれません。
善良なモグワイに食欲を加えるとグレムリンになる
ビリーは誤って午前0時を過ぎてから不良モグワイにエサを与えてしまいます。真夜中にエサを与えられた不良モグワイはさなぎとなり、やがてグレムリンに変態します。
不良モグワイは貪るような食欲を得てグレムリンとなり、己の欲望のままに突っ走る人間のような存在に変わってしまいます。
不良モグワイをさらにパワーアップさせたかのような邪悪な存在に生まれ変わったのです。
モグワイのグレムリンへの変化が象徴するもの
ここではモグワイがグレムリンへ変化することにどういう寓話的な意味があるのか、またグレムリンはなにを象徴しているのかを見ていきます。
モグワイからグレムリンへ変化する意味
モグワイからグレムリンへの変化は、善良な普通の人間でも欲望のままに生きると醜悪な人間になってしまう、ということを暗示した寓話です。
この変化は、普通の人間がギャンブルや危険な投資話にのめり込むと周囲を省みない別人になる、というような変化を体現しています。
人間は強欲になると、醜悪な存在に変わってしまうのです。
グレムリンへの変化が象徴するのは強欲な人間
変態したグレムリンが象徴するのは強欲な人間です。
とてもわかりやすい意地悪ばあさんのディーグル夫人をはじめとした強欲な人間を、グレムリンは象徴しています。
ディーグル夫人は金のことしか考えない人間で、街の大地主。
飼い猫達にはドル・マルクなどの各国通貨の名前をつけ、貧しい家庭からも平気で搾取しようとするような人間です。
ドラゴンの顔にディーグル夫人が描かれた絵を、主人公のビリーが漫画で描いています。
ですがドラゴンとは強大な力で貪欲に財宝を溜め込み、守ろうとするヨーロッパ貴族を風刺した存在です。
ビリーが描く絵は『ディーグル夫人=強欲な人間』ということを上手く表現しています。
ディーグル夫人はまさにグレムリンを象徴する強欲な人間なのです。
欲望のなれの果てに残るもの
欲望のままに生きるグレムリンがもたらすものとはなんなのでしょうか?強欲なグレムリンの行く末を見てみます。
欲望の果てに残るものは『無』
中国の伝説上にトンという妖怪がいます。
異常に巨大で欲深く、何でも食べる妖怪で、鉄や星、宇宙をも食らい、最終的には自分自身の体まで食べ尽くし、後には無だけを残します。
『無』これこそが欲望のなれの果てです。
グレムリンが残したもの
グレムリンもトンと同じです。
自分の好き勝手に振る舞い欲望のままに突っ走ります。
街を荒らし回ったグレムリン達はさんざん楽しんだ挙句、最後はビリー達に退治されます。
一匹だけしぶとく生き残ったストライプも太陽光を浴びせられて消滅します。