これも自分が死ぬ前にしておこうとした決意だったのです。
本当の親の存在はいずれ子供たちが向き合うべきものですが、自分が生きている間に実母との絆を取り戻してあげたかったのでしょう。
勿論子供たちのためですが、母として子供を愛するという幸せを実母たちに与えたかったのかもしれません。
手話を安澄に前もって勉強させていたのも、実母との再会の為であり双葉の大きな愛を感じます。
容体の悪化と共に変化したもの
末期がんは最後のときまで、時間は限りなく少ないものです。
そんな時間の経過の中、双葉は何を思って過ごしたのでしょう。
家族の為気丈であった母
双葉は自分の病気を子供たちに知らせませんでした。
少しでも悲しませないように、少しでも笑顔で過ごせるように……。
彼女自身、残された時間を家族の為に生きることが出来て幸せだったことでしょう。
いいかえれば、家族の為に生きてこれたから死への恐怖を忘れられたのかもしれません。
容態の悪化が生きたいという想いを強くした
自分が作り上げた家族の姿が完成した頃、双葉の容態は悪化していきます。
彼女は容態の悪化により自分の死を実感したことでしょう。
死への恐怖は、どんな人間も持っているもので、双葉も例外ではありません。
死にたくない
引用:湯を沸かすほどの熱い愛/配給会社:クロックワークス
双葉の上記のセリフは、それまで我慢してきた彼女の想いが溢れたセリフです。
幸せな家族という存在の中に自分もずっといたかったことでしょう。
容態の悪化は双葉に死への恐怖と、生きたいという強い想いを抱かせています。
容態の悪化は彼女の視線を自分自身へ向けさせた
双葉は余命宣告を受けてから、家族のことを見て家族の為に生きてきました。
容態が悪くなるにつれ(家族の問題が解決したこともあり)、自分自身の心と向き合っていきます。
そんななか、死への恐怖が湧き生きたいという想いが膨れるのですが、彼女にとっては全てが死への準備ともいえる行動です。
娘たちが強く成長した
双葉の容態の悪化は、娘たちの心を強くしていきました。
絶対、お母ちゃん独りぼっちになんてしない
だから安心して、ありがとう
引用:湯を沸かすほどの熱い愛/配給会社:クロックワークス
娘、安澄は寝たきりになった双葉に話かけました。
これまで双葉に守ってもらう存在だった安澄は、双葉の想い通り立派に成長しています。
彼女の成長は、双葉の容態と反比例していきました。
双葉は成長した娘の姿を見ることが出来てどんなに幸せだったことでしょう。
ラストシーンの考察
この映画で、賛否両論が出ているラストシーンですが、双葉が亡くなった後のお葬式は銭湯内にて行われました。
戦慄を覚えたという意見
銭湯のお湯を沸かすかまどで双葉の遺体を火葬し、その熱で沸いたお湯に家族で浸かるシーンがあります。
タイトルの文字の奥に双葉の足の裏がチラチラと映りこんでいる……。