そうするうちに彼らの”思考”を理解できるようになり、そして彼らの「未来を見る力」を手にしました。
「未来を見る力」というと、人間からすれば特殊な能力です。
しかし知的生命体にとってはあくまでモノの見方の一つだったのです。
ルイーズは「サピア=ウォーフの仮説」を体現したのです。
ルイーズが見た未来とは
ではルイーズが知的生命体から与えられた「未来を見る力」によって見た未来は、どの場面だったのでしょうか。
過去(物語の起点)を宇宙船の到来と考えると、一つは中国軍の指揮官とパーティで会った場面です。
指揮官から直々に宇宙船への攻撃を止めてくれたことについての感謝の言葉が述べられます。
二つ目が知的生命体とコンタクトをとり始めてから出てくるようになった娘との場面です。
冒頭に「娘の誕生・死」の場面があるので、一見過去に亡くなった娘との回想シーンかと思われますが、これも未来の場面です。
直接的に描かれることはなかったのですが、夫との離婚もルイーズは未来の場面として見ました。
未来があるから今もある
未来でルイーズが中国軍の指揮官に会ったこと、未来でルイーズが娘を授かったことが結果として「今」に影響しました。
「今」とは、ルイーズが知的生命体とコンタクトをとっていた場面です。
時間が、一般的に認識されている過去から未来への直線的な流れならば、未来が今に影響することはありません。
けれども本作では、時間の流れは一方的でない、と伝えています。
時間の流れについては現代の科学でも明らかにされていません。
そのため本作のような時間が相互に影響し合う、ということもSFだと言い切ることはできないのです。
ルイーズの心情
ルイーズの決断は悲劇的なものではない
ルイーズは結婚する前に夫との離婚や娘の死も知りました。
ルイーズはそんな辛い未来を見ながらも、夫との結婚を決め娘を産みんだのです。
どのような心情からその決断を行ったのか、映画の最後の場面でルイーズの気持ちがあらわれています。
この先何が起きるか分かっていても構わない
どの瞬間も大切にするわ
引用:メッセージ/配給会社:パラマウント
未来にどんな悲劇的なことがあったとしても、その未来が今に影響し、結果として今が未来をつくる。
それをルイーズは身をもって理解しました。
そのためどんなことが未来で待っていようとも、全てを受け入れようという前向きな心情になったのです。
「どの瞬間も大切にする」とは
ルイーズのいう「どの瞬間も大切にする」とは、今も未来もすべてがつながっている、という思いから出た言葉です。
人は未来を予測できないし、予測できたとしてもその未来が今とつながっている。