「何も考えない」ことが醸し出す怖さ
パランタイン大統領候補の街頭演説にも姿を現し、シークレットサービスに、わざわざ話しかけて、住所氏名を教えてしまうという行動。
モヒカン姿でパランタインに近づき、衝動的に彼を撃とうとするも、以前話しかけたシークレットサービスに見つかり退散するとか…
トラヴィスは何を考えて行動したのでしょうか?
日常から逃げたいと思うのは伝わってきますが、その行動があまりに場当たり的でした。
それをやったところで、どうにもならないだろう?という予測すらしていない。
トラヴィス自身の妄想的な衝動をひたすら実行に移してしまう狂気…。
「何も考えない」ことが醸し出す怖さ、を提示したかったのでしょうか?
スコセッシ自身のカメオ出演
浮気の尾行?
監督であるマーティン・スコセッシも、タクシーの乗客の1人として登場しています。
浮気をしている妻を尾行中であるという役どころを、見事に演じていました。トラヴィスに負けないぐらいイカレたキャラです。
この場面でのスコセッシの言動に対して、デ・ニーロが、その都度アドリブで返事を返したアウトテイクがあるそうです。
スコセッシは「頭の中が真っ白になって」瞬時に反応できなかった、とインタビューで答えています。いつか陽の目を見てほしいですね!
ジョディ・フォスター、覚醒!
天才子役は13歳
わずか13歳(撮影時の1975年は12歳)で出演を果たしたジョディ・フォスターはいわゆる子役タレントでした。
1972年に映画デビューはしたものの、ブレイクのきっかけが掴めずにいました。
撮影で絡んだロバート・デ・ニーロのアドリブを連発する演技メソッドに強くインスパイアされたと後に語っています。
現場でも素晴らしい化学反応を起こし、アカデミー助演女優賞にノミネートまでされるほどの評価を得ました。
本作が与えた社会的影響と思わぬ余波
きっかけは大統領暗殺未遂事件
スコセッシ自身は1972年のジョージ・ウォレス大統領候補の狙撃未遂事件が、本作の着想のきっかけの一つになったと言われています。
ジョディ・フォスターの自称熱狂的なファンがアメリカ大統領ロナルド・レーガンを狙撃しようとして逮捕されるという事件も起きました。
犯人は、勿論「タクシー・ドライバー」を観ていました。
その為1984年の「ホテル・ニューハンプシャー」出演まで、ジョディも映画界からしばらく距離を置くほどでした。
いかに本作が現実を封じ込めていたか?を証明するような事件でした。