もしイルザだけの通行証を用意してアメリカに逃がせば、イルザはラズロもリックも失い一人になってしまいます。

ラズロは逮捕され死ぬでしょうし、リックはイルザのことが好きなままカサブランカに無為にとどまることになります。

イルザとリックが二人でアメリカに行けば、後味は悪いですが丸くおさまります。

二人は愛し合っていますし、ラズロとともに危険なレジスタンス活動をして命を危険にさらすこともなくなります。ラズロは死んでしまうでしょうが…。

そして、リックは五つ目の選択肢を選びました。

二人に通行証を渡し、自分はカサブランカにとどまったのです。なぜリックはそうしたのでしょうか。

戦う決意

小ポスター、米国版「カサブランカ」ハンフリー・ボガート

リックはエチオピアの動乱やスペインの内乱を支援していました。それも負ける側に加勢していました。

お金目当てではなく、正義感に基づいて活動していたのでしょう。

リックがイルザとパリにいたとき、リックはドイツのブラックリストに乗っていると言っていました。

ブラックリストに乗っていたのは、その経歴があってのことかもしれません。

リックが内乱に協力していたのは1935年から1936年にかけてだからです。

このことからわかるように、リックにはもともと強い正義感があります。

しかし、イルザに捨てられてからは、自分以外のために戦うことを放棄していました。

けれど、カサブランカでイルザに運命的に再会し、彼女が消えた理由と彼女の気持ちを知って、彼は過去の自分を取り戻しました。

リックはイルザと再会したことで、「自分だけが良ければそれでいい」という男ではなくなったのです。

自分だけが安全な場所に愛する女と行くわけにはいかないと決意し、ラズロとイルザに通行証を渡したのでしょう。

ラズロのカリスマ

ラズロはアメリカならばもっと抵抗活動ができるとリックに言いました。

ラズロなら世間を動かすことができ、そしてその動きは戦争をとめる力になります。

リックがラズロを生かすことを考え始めたきっかけは、ラズロが指揮をとってフランス国家を歌ったときでした。

リックはラズロの大衆を動かす力を目の当たりにして、彼が世界を変えるために必要な人物だと痛感します。

幾多の紛争に関わってきたリックにはそれがわかったのです。

だから、自分のためではなく、世界のために選択をした結果、自分はカサブランカに残り、イルザとラズロに通行証を渡したのです。

戦時下の映画

鍋

このように、この映画は単なる男女の気持ちの問題できれいに片付くものではありません。

リックとイルザは愛し合っているのだから、二人で安全なアメリカに逃げればいい。ふつうの恋愛映画なら、それでいいのです。

しかし、この映画は戦争中に作られた物語です。

なのでこの物語の結末は二人の愛の問題だけで決まるのではなく、世界の問題が絡んできます。

そしてこの映画は、あるメッセージが込められています。

もし自分が世界のために何かができるなら、自分の大切なものを捨ててでも世界のために尽くすというメッセージです。

戦争が身近ではない現代日本に生きる私たちには、リックがあの選択をした心理にすこし違和感を覚えるかもしれません。

作品に込められたメッセージが政府や戦争のためのもののように思えて、不快感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、時代というものは文化に必ず影響を与えます。とくに戦争中は世相が文化に与える影響が強いのです。

プロパガンダ

戦争中は、戦争のために国に尽くすという心構えを国民に植え付けるべくたくさんの映画や出版物が作られました。

そういうものを「プロパガンダ」といいます。

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