監督は本作を通して、罪を犯した人やその家族の日常をリアルに描いています。
差別のない国はない
差別のない国なんてない、ここでいきていく
引用:手紙/配給会社:ギャガ
劇中での由美子のセリフから監督の思いが切に伝わります。
どこに行っても差別というものはあるものです。
世界中で差別反対を叫んでも、人間の心から本当の差別が消えることはありません。
監督は『手紙』を通して、リアルな差別と向きあっているのです。
犯罪者への差別は仕方のないこと
人が差別をするのは、自己防衛本能のようなもの
引用:手紙/配給会社:ギャガ
犯罪者の社会復帰が叫ばれる現代ですが、彼らの社会復帰が進まない現状には「差別」という問題があります。
映画で描かれていたように、犯罪者の家族にもいえることなのかもしれません。
人は皆「差別」は良くないと考えています。
そう思いながらもやはり罪を犯した人には近づきたくないというのが本音ではないでしょうか。
しかし、そう思うことが「いけないこと」だと自分を卑下する心も生まれます。
監督はその心を自己防衛の心といいきり、悪いものだとは説いていません。
本作を通して差別に対する考え方が大きく変わった人もいるのではないでしょうか。
差別は犯罪を犯した者の罪
下記の平野会長のセリフは捉え方によっては理不尽な意味を持つセリフですが、被害者サイドから観ると納得のセリフです。
今の君の苦しみをひっくるめて、君の兄さんの犯した罪なんだ
引用:手紙/配給会社:ギャガ
加害者の家族への差別は、社会だけに問題があるという世間に真っ向から対抗する意見です。
家族や親戚が差別されることも含めて、全てが犯罪を犯した者の罪だといっています。
差別は止めようとして止まるものではないという、きれいごとを省き現実をしっかり見据えた意見ではないでしょうか。
監督は差別は辛いことであるということを十分に描きつつ、消えはしない現実だと突き付けているかのようです。
涙を流した兄の感情
獄中で久々に見る弟の姿に涙を流した兄の心境は一体どんなものだったのでしょう。
罪の重さを実感した
兄剛志は直貴からの最後の手紙を受け取るまで、弟がどんな環境でどんな差別を受けていたか知りませんでした。
自分の犯した罪が、大切な弟を苦しめていたのです。
慰問に現れた弟の姿をみて罪の重さを再確認したことでしょう。
平野会長のセリフが示すように、弟にも辛い思いをさせた罪を悔やんだ涙だったのではないでしょうか。
兄だと言ってくれる弟への愛
弟の為に罪を犯してしまった剛志は、獄中で何を思っていたのでしょう。
もしかしたら、弟がいなかったら自分は罪を犯していなかったのに、と恨んだこともあったかもしれません。
兄貴はどうしようもないバカだ
切り離すことのできない兄だから
自分を恨んでいると思っていた弟から、自分を肯定する言葉が聞けたとき、彼は弟への深い愛情を再確認しました。
愛おしいたったひとりの弟と心が通じ合った瞬間だったはずです。
弟が仲間と一緒に頑張っていたことへの安堵感
周りの人間に差別を受けて、辛い思いをして過ごしていると思っていた弟が目の前に現れたのです。
弟には仲間もいて一緒に漫才をやっている……。